研究課題/領域番号 |
20K16889
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
芝 剛 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (90868069)
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研究期間 (年度) |
2022-12-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 家族生地中海熱 / コルヒチン / パイリンインフラマソーム / iPS細胞 / マクロファージ / 家族性地中海熱 / 自己炎症性疾患 / インフラマソーム / iPSマクロファージ |
研究開始時の研究の概要 |
家族性地中海熱は、免疫系の遺伝子異常により発熱や胸痛などの炎症を繰り返す疾患である。コルヒチンが有効であるが、その作用機序は不明であり、5-10%の患者さんでは無効であったり副作用により使用できない。研究代表者は、家族性地中海熱の病態をiPS細胞を用いて実験室で研究する方法を確立した。この方法を用いてコルヒチンが家族性地中海熱に有効である分子的作用機序を解明する。また、上記iPS細胞を用いてコルヒチンに代わる治療薬を探索・開発し、コルヒチンが使えない患者さんの新たな治療薬とする。さらに、上記細胞の解析により、家族性地中海熱の分子病態を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究はコルヒチンがパイリンインフラマソームの異常活性化を阻害する機序を解明すること、そして異常パイリンの動態解析を通じて家族性地中海熱の病態を解明することを目的としている。まず、パイリンインフラマソーム異常活性化の機序を解明するため、遺伝性自己炎症疾患関連遺伝子バリアントデータベースであるInfevers(https://infevers.umai-montpellier.fr/web/)に記載されたMEFVバリアントをヒト単球系細胞株に導入してパイリン脱リン酸化を利用した機能解析を行った。その結果、約30種のバリアントの病原性をパイリンインフラマソーム活性化の観点から分類することに成功し、論文化した(Honda Y, Maeda Y et al. J Clin Immunol. 2021; 41(6):1187-1197.)。家族性地中海熱の代表的な病原性バリアントにおいてこのインフラマソーム活性化がコルヒチンにより部分的に抑制されることも証明した。この報告によって多くのバリアントの病原性を迅速に評価できるようになり、またバリアントによってインフラマソーム活性化機構やその程度が異なることが判明した。この論文報告後には開発した機能解析のハイスループット化を行い、さらに多数のMEFVバリアントのインフラマソーム活性化能を評価したところパイリンの自己活性能や脱リン酸化剤に対する反応の多様性が明らかとなった。現在、各バリアントの細胞内動態を評価しており、パイリンインフラマソーム活性化機構の解明とコルヒチンの作用機序解明を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究計画のうち「①コルヒチンがFMF iPS-MPへ与える影響のプロテオーム解析」ではコルヒチン添加によって発現が変化するタンパクを絞り込むことができなかった。しかし、「②パイリン脱リン酸化とコルヒチン作用点の関係の解明」を行うためにInfeversデータベースに記載されたMEFVバリアントをヒト単球系細胞株に導入してパイリン脱リン酸化を利用した機能解析を行ったところ、パイリンインフラマソーム活性化の観点から各バリアントの病原性を分類することができた。家族性地中海熱の代表的な病原性バリアントにおいてこのインフラマソーム活性化がコルヒチンにより部分的に抑制されることも証明した(Honda Y, Maeda Y et al. J Clin Immunol. 2021; 41(6):1187-1197.)。その後、開発した機能解析のハイスループット化を行いさらに多くのMEFVバリアントを評価したところ、バリアントによって様々なインフラマソーム活性化能とパイリン脱リン酸化剤への感受性を有することが明らかとなった。そこで、令和3年度以降の計画である「③蛍光タンパクを用いたFMF iPS-MPにおけるパイリンタンパクの細胞内動態の解明」に関して、より迅速に作成できる細胞株と蛍光タンパクを用いた系によって各バリアントの細胞内分布を評価したところ、バリアントによって異なる挙動を示すことが明らかになり、パイリンインフラマソーム活性化機構とパイリン関連自己炎症性疾患の病態を解明しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後はMEFVバリアント機能分類の拡張、genotype-phenotype correlationの解明、パイリンの細胞内動態の解明を行う予定である。具体的には、ハイスループット化したパイリン脱リン酸化を用いた機能解析系を用いて、Infeversに登録された全てのMEFVバリアントの機能評価を行い、パイリンインフラマソーム活性化の観点からの機能分類表を完成させる。この機能分類と各バリアントの臨床報告とを統合することによりMEFVバリアントのgenotype-phenotype correlationを確立させ、パイリン関連自己炎症性疾患の早期かつ正確な遺伝子診断に寄与することを目指している。さらに、活性化正常パイリンと変異パイリンの細胞内動態の解明を行ってインフラマソーム活性化機構を解明するとともに、コルヒチン投与によって各変異パイリンの細胞内動態がどのように変化するかを評価し、コルヒチンの作用機序の解明と、コルヒチンが有効なバリアントと無効なバリアントを予測し適切な治療法の提案を行うことを計画している。
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