研究課題/領域番号 |
20K16901
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
宮内 彰彦 自治医科大学, 医学部, 講師 (50570397)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | MECP2 / Rett症候群 / AAVベクター / micro RNA / miR302 / 遺伝子治療 / MECP2重複症候群 / アデノ随伴ウイルスベクター / 低発現プロモーター / ヒトiPS細胞 / Mecp2欠損マウス / dCAS |
研究開始時の研究の概要 |
Rett症候群は女児に発症し、MECP2の変異により生じるが、MECP2の重複男児でも重度知的障害、難治性てんかんを発症する。よってRett症候群の遺伝子導入治療では、MECP2の発現が過剰であっても機能異常を来すため、導入する遺伝子の発現量を調節する方法、あるいは別の方法の開発が不可欠である。本研究では、遺伝子導入治療の方法として、AAVベクターにMECP2を導入し、低発現のプロモーターや内因性プロモーターを作成し過剰発現の調節を検討する。また、CRISPR-dCas9システムと遺伝子転写促進分子を利用し、不活化されている正常MECP2を発現させ治療することを検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、MECP2関連疾患であるRett症候群の遺伝子治療開発を目的としている。Rett症候群は女児に発症しMECP2の変異により生じるが、MECP2の重複では男児で重度知的障害、難治性てんかんを発症する。すなわちMECP2遺伝子関連疾患に対する遺伝子治療開発では内因性正常MECP2タンパク質の発現を制御しそのレベルを非疾患レベルに維持する必要がある。我々はこれまでに、Rett症候群に関して、初年度に作製したニューロン特異的SynIプロモーター下で正常なMECP2を発現する改良型AAV9型ベクターをMecp2欠損マウス(Rett症候群のモデルマウス)に投与した。組織解析ではMECP2タンパク質の脳への広範な発現を検出し、生存延長や表現型の改善も認めており、評価を継続している。また、MECP2発現量の抑制方法に関しては、MECP2重複症候群でmicro RNA(miRNA)を応用したMECP2の発現抑制を応用した治療方法について検討を行っている。MECP2重複症候群モデルマウスを用いてMECP2を抑制するmiRNAの探索では、miR302を含む数種類のmiRNAが得られた。申請者は、miRNAおよび神経形成の研究を専門とするBalor College of Medicineの海外共同研究者であるRonald Parchem博士の研究室にてmiRNAに関する指導を受けており、miR302を含むmiRNA研究に従事している。miR302は神経発生に大きく関与し、欠損すると神経管の閉鎖が障害されマウスは胎生致死となる。一方でヘテロ接合性欠損マウスは生存可能であり、発現量に依存して神経発生に与える影響が変わる興味深いmiRNAである。miR302が神経発生に影響を与える機序の解明も含め、MECP2重複症候群においてMECP2の発現を抑制する方法として検討を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、Rett症候群のモデル動物であるMecp2欠損(KO)マウスを用いて、作製した遺伝子治療用ベクターを1 x 10e11 vg/マウスの用量で大槽への投与を行い、生後2か月のマウスにて、MECP2タンパク質の広範な発現を脳、特に海馬、小脳、大脳皮質、線条体、視床で検出した。Mecp2-KO雄マウス(-/y)では、生存期間の延長および行動障害の改善を認め、Mecp2-KO雌(+/-)マウスは、生後12ヶ月で後肢の握りしめを改善するなど表現型の改善を認めている。引き続き生存期間や行動実験による評価を継続していく。脳オルガノイドの作成については、オルガノイド作成キットを用いてiPS細胞から脳オルガノイドの作成することは成功しているが、疾患ES細胞や患者iPS細胞を用いた再現性の保持された方法について検討を継続している。miRNAを用いるための知識、技術については、MECP2をターゲッ トとするmiRNAの一つであるmiR302のノックアウトマウスや、Wnt1、Sox1などの脳神経発生マーカーを利用した数種類のCREマウスを用いて順調に習得が進んでいる。他にも、miR302と関連するmiR290、連動して機能することが示唆されるLet-7など数種類のmiRNAに関する知識や実験を、Ronald Parchem博士の研究室にて習熟した研究者らから指導を受けている。同時にmiRNAを用いた治療法開発で重要な課題となりうるOff target効果の懸念に関して、miR302のノックアウトや過剰発現のモデルを用いて、影響を与えうるシグナル経路や分子について検討を行っている。今後は申請者の帰国後に、MECP2重複症候群モデルマウスにおけるmiRNA模倣体を組み込んだAAVベクターの投与およびその効果を調べていく予定であり、おおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も継続して、Mecp2欠損マウス(Rett症候群モデルマウス)の遺伝子治療用AAVベクター投与後の生存期間やロータロッド試験、オープンフィールド試験、スリーチャンバー試験などの運動障害等の評価、観察や、組織・神経細胞の変化の解析を進めて結果をまとめていく。また、MECP2重複症候群のモデルマウスであるMECP2-Tgマウスについても既に保持しており、MECP2-Tgマウスの初代ニューロンを用いてMECP2を抑制するmiRNAを探索し、miR302を含むいくつかの候補miRNAを既に得ているため、今後MECP2-Tgマウスに対して、MECP2の発現抑制に働くと予想されるmiRNA模倣体を組み込んだAAVベクターを投与しその効果を調べていく。また、疾患モデルマウスと並行し、患者iPS細胞由来神経細胞を用いた中枢神経の治療評価系の構築に関しては、今後はMECP2重複症候群の患者iPS細胞を用いた脳オルガノイドを作成に焦点を絞っていく。その他、患者iPS細胞由来の神経細胞の変化やX染色体不活性化因子等がMECP2に与える影響についても検討を継続し、核酸医薬(SiRNA、アンチセンスオリゴ等)や遺伝子編集技術を応用したdCAS9の融合による複合的な方法を用いた、正常遺伝子の発現レベルで制御が可能なAAVベクターの構築についても引き続き検討していく。
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