研究課題/領域番号 |
20K16936
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
阿部 清美 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (30594973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 先天性甲状腺機能低下症 / Pax8変異 / 遺伝子改変マウス / 甲状腺形成異常 / 腺腫様甲状腺腫 / Nkx2.1変異 / Nkx2.1 / 胎児甲状腺 / PAX8遺伝子変異 / 甲状腺低形成 / 甲状腺腺腫 / PAX8変異マウスモデル |
研究開始時の研究の概要 |
器官特異的転写因子であるPaired box 8 (PAX8)は、甲状腺の発生、分化、組織形成に欠かせない。PAX8変異は甲状腺低形成を伴う先天性甲状腺機能低下症を惹起する。特異な臨床像(甲状腺機能の経年的変化、胎児様甲状腺組織、老年期の腺腫性甲状腺腫出現)を呈する世界最大の新規PAX8(G56S)変異家系を経験した。 ゲノム編集技術を用いてPax8(G56S)変異マウスモデルを作成し、変異の病因性を明らかにするとともに、胎児様甲状腺および腺腫性甲状腺出現の機序の解明を目指す。経年的に臨床像が変化する本変異の解析により、時間・空間的に遺伝子発現を制御する転写因子の疾患発症機序の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
器官特異的転写因子であるPaired box 8 (PAX8)は、甲状腺の発生、分化、組織形成に必須であり、その機能低下変異により、甲状腺低形成を伴う先天性甲状腺機能低下症を来す。新規PAX8(G56S)変異を保有する4世代の家系において、既報例とは異なる特異な臨床像(甲状腺機能の年代別変化、胎児様甲状腺組織、成人中年期以降の腺腫性甲状腺腫出現)を観察した。ゲノム編集技術を用いてPax8(G56S)変異マウスモデルを作成し、変異の病因性(甲状腺機能低下症や甲状腺形成障害の惹起の有無)を明らかにし、さらに胎児様甲状腺および腺腫性甲状腺出現のメカニズムを解明する。 本研究は、次の通りに計画・実施中である。①ゲノム編集技術を用いたPax8(G56S)変異マウス(以下変異マウス)の作成。②変異マウスにおける甲状腺機能評価。③変異マウスの体格を含む外的表現型および甲状腺組織の評価。④変異マウスの甲状腺組織のたんぱく質や遺伝子発現を比較し、濾胞形成不全や腺腫発生の機序の探索。⑤変異マウスの継時的(週齢・月齢毎の表現型)観察による甲状腺形態や濾胞形成過程、胎児様甲状腺や腺腫様甲状腺腫の出現を評価。⑥変異マウス単独で表現型が得られなかった場合、PAX8と連携して働くNKX2.1転写因子のノックアウト(KO)マウスとの交配で作製したPax8(G56S)/Nkx2.1(KO)マウスについて、上記②から⑤を検討する。 2022年度は昨年度に引き続き、Pax8(G56S)変異マウス、Pax8 KOマウス、Nkx2.1 KOマウスについて、変異型別に②甲状腺機能評価および③体格評価を行った。本研究における2022年度の最大の実績は、マウスの甲状腺機能評価方法を確立し、Pax8(G56S)ホモ接合性変異マウスの甲状腺機能低下を確認できたことである。体格と生存率について、変異マウスは野生型に比して小さいものの、致死的ではなかったため、⑤変異マウスの継時的長期観察も可能であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、PAX8(G56S)変異について、ゲノム編集技術を用いて変異マウスモデルを作成し、変異の病因性を明らかにするとともに、胎児様甲状腺および腺腫性甲状腺出現のメカニズムの解明に努めている。現在までの研究計画達成度は4年間全体の60%である。2020年度のCOVID-19流行によるマウス作製中断と、2021年度の当研究室所属の動物飼育校舎改築による飼育マウス数の限定により、計画実施は当初より遅れた。また、変異マウスの繁殖が困難であり、⑤を実施する十分なマウス数を得られなかったことや、甲状腺機能評価としてTSH、T4測定方法が安定せず、評価困難であったことも、進捗に影響している。 しかし、2022年度は、T4はLC-MS/MSを用いて、TSHはマルチプレックス・アッセイを用いて測定する方法を確立することができた。前述のとおり予備実験にてPax8(G56S)ホモ接合性変異マウスの甲状腺機能低下を確認できたことより、やや遅れてはいるが、確実に研究目的を達成するべく実施中である。 また、Pax8(G56S)ホモ接合性変異マウスで甲状腺機能低下の表現型が得られたため、予備実験として行う予定であった「⑥Pax8(G56S)変異マウス単独で表現型が得られなかった場合のPax8(G56S)/Nkx2.1(KO)マウスの評価」については、本研究期間内での実施の必要性はなくなる可能性が高く、その分、実施の遅れを取り戻せるよう努める。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本研究計画の最終年度にあたるため、表現型解析に用いるマウス数をさらに増加し、②~⑤の計画を同時進行で進めていく。尚、前述のとおり、⑥の実施については、本研究内での実施の必要性が低くなったため、一旦保留とする。 「② Pax8(G56S)変異マウスにおける甲状腺機能評価」では、マウス週齢、雌雄をそろえ、統計学的解析に十分なデータを取得する。「③ Pax8(G56S)変異マウスの体格を含む外的表現型および甲状腺組織の評価」および「④ Pax8(G56S)変異マウスの甲状腺組織のたんぱく質や遺伝子発現を比較し、濾胞形成不全や腺腫発生の機序の探索」では、甲状腺組織形態評価を中心に行い、変異が甲状腺形成異常や濾胞形成不全を惹起しているかを検討する。「⑤ Pax8(G56S)変異マウスの継時的(週齢・月齢毎の表現型)観察による甲状腺形態や濾胞形成過程、胎児様甲状腺や腺腫様甲状腺腫の出現を評価」では、長期観察用マウスの初期飼育数を十分確保し、最長で1年後まで飼育したマウスの組織観察を行う。
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