研究課題/領域番号 |
20K16967
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53010:消化器内科学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
小田桐 直志 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (10623241)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肝がん / 化学療法 / 免疫治療 / 肝星細胞 / 細胞老化 / 老化関連分泌表現型 / 肝硬変 |
研究開始時の研究の概要 |
加齢や慢性肝炎に伴って生じる肝がんは、その病態進展に肝間質との相互作用が少なからず影響していると考えられている。近年、肝星細胞の老化に伴い分泌される液性因子が肝がんの病態進行に寄与することが報告されているが、ヒト慢性肝疾患における老化肝星細胞の実態やその生理的意義については不明な点が多い。本研究では、申請者が既に報告したヒト肝星細胞の老化関連分泌因子(ANGPTL4・IL-8・PF4V1)に着目し、肝がん微小環境の変化を運命付ける因子を同定してその病態生理学的意義を明確にすることを目的とする。さらに、慢性肝疾患患者の検体を用いて老化肝星細胞の存在証明と臨床データとの相関性を見出すことを目指す。
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研究実績の概要 |
肝星細胞の老化関連分泌因子であるIL-8を含むサイトカインの血中濃度と肝細胞癌患者における化学療法との関連性に着目した。現在、切除不能肝細胞癌に対してはアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法(Atezo+Bev)が第一選択として行われている。2020年12月から2022年8月にかけて、当科においてAtezo+Bevを導入した切除不能肝細胞癌38例を対象とし、治療開始前と治療開始後4-7日における血液検体を用いてサイトカイン19種類(EGF、G-CSF、GM-CSF、IFNγ、IL-1b、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12P70、IL-13、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、TNFα、VEGF)の血漿中濃度を測定し、治療開始後早期におけるサイトカイン濃度の変化とAtezo+Bevの治療効果や有害事象との関連について解析した。投与前と投与後4-7日後で血漿中濃度に変化のあったサイトカインを解析したところ、G-CSF(p=0.0231)、MCP-1(p<0.001)、TNFα(p=0.0024)、VEGF(p<0.001)に有意な変化が見られた。治療効果判定が行われた34例において、最良治療効果がCR/PRの群(n=14)は、SD/PDの群(n=20)に比較して治療開始前のG-CSF(2.67 vs 1.70 pg/mL, p=0.003)と治療開始後のG-CSF(9.13 vs 1.70 pg/mL, p=0.022)・MCP-1(249.84 vs 196.70 pg/mL, p=0.042)の濃度中央値が各々高かった。これまでの検討ではIL-8とAtezo+Bevの治療効果との関連性を見出すことはできなかった。しかし、血液中のサイトカイン濃度は肝臓局所における濃度変化を反映しているとは限らず、肝内局所における濃度変化を理解する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大に伴う実験時間の制約などから実験計画に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
①老化ヒト肝星細胞より分泌されるIL-8の機能解析(in vitro):老化ヒト肝星細胞(HHSteC)と好中球(HL-60など)との共培養による細胞遊走アッセイを行い、好中球遊走能に与える影響を調べる。また、ヒト類洞内皮細胞(LSEC)を用い、老化ヒト肝星細胞と共培養を行い、内皮細胞の増殖に与える影響を調べる。また、内皮細胞の遊走アッセイやチューブ形成アッセイにより、内皮細胞の遊走能や管腔形成能に与える影響を解析する。さらには、IL-8 siRNAやrecombinant IL-8を用いることでもこれらの影響を検証する。老化肝星細胞と肝がん細胞(HepG2、Li-7、HLEなど)を共培養することでその増殖への影響を評価する。また、IL-8 siRNAやrecombinant IL-8を用いて検証する。 ②ヒト肝疾患症例での老化肝星細胞の解析、肝がん化学療法の治療効果の検証(in human):慢性肝疾患患者の肝生検組織や手術標本を用いて、細胞老化マーカー(p21、p16)と肝星細胞マーカー(αSMA・CYGB)を指標として、免疫染色法による老化肝星細胞の同定を試みる。また、炎症細胞浸潤との関連も解析する。さらに、患者の経過(患者背景、治療内容、組織所見など)との関連性についても解析する。
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