研究課題
若手研究
本研究は①非アルコール性脂肪肝炎(NASH)における腸管の免疫細胞群と癌微小環境の動態の解明。②NASHの肝臓における脂肪沈着、炎症および線維化と代謝産生物質が腸管に与える影響の解明。これによりNASHが大腸癌の発生と進展に与える影響の詳細を明らかとすることを目的とする。NASHにおける腸管と肝臓の相互連関において腸内細菌や粘膜由来の代謝物質が肝臓に与える影響についての検討は近年発展を認める。しかし、NASHにおける腸管の免疫動態と癌微小環境の詳細解明はなされておらず,肝臓の病態が腸管の免疫細胞を介し大腸癌へ与える影響の解析により,NASHを背景とした大腸癌に対する新しい予防法確立につながる。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は本邦において生活習慣病に関連する疾患として増加しているが、根本的な治療法は確立されていない。NASHは腸管における大腸癌リスクであることが報告されており、腸管の免疫細胞と癌微小環境が大腸癌の発生と進展に関与することが示唆されているが,消化管の免疫動態と間質細胞などで構成される癌微小環境に対しNASHが与える影響の詳細は解明されていない。本研究ではNASHにおける腸管の免疫動態と癌微小環境への影響を明らかとし、NASHが大腸癌の発生と進展に与える影響の詳細を解明することを目的としている。また、NASHにおいて肝臓の炎症および線維化を改善する働きが明らかとされつつある間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell; MSC)を用いることで、NASHの肝臓における炎症と線維化が大腸癌に与える影響の詳細について解明を試みている。本年度はMC38マウス大腸癌細胞株をNASHおよびコントロールマウス腸管に移植し、サイズ変化の評価を行うと共に、腸管の免疫細胞群の解明をFACSおよび免疫組織化学染色を用いて行ない、NASHとコントロールの腸管における大腸がんの発育および免疫動態の差異を明らかとしつつある。また、NASHマウスにおいてMSCが肝臓の非実質細胞であるstellate cellの活性化を抑え、非実質細胞に由来するサイトカインの産生に修飾を加えることで、実質細胞の障害を軽減させていることを見出し、全国学会にて報告を行った。令和5年度はこれらを応用し、MSCによるNASHに対する治療が、腸管における大腸がん株の増大と腸管内の免疫状態に与える影響について明らかとしていく予定である。
3: やや遅れている
本年度は、syngenic 大腸がんmodelマウスを作成し、NASHにおける大腸癌への影響について評価を行うと共に、腸管の免疫細胞群の解明をFACSおよび免疫組織化学染色を用いて行ない、更に詳細なNASHとコントロールの腸管における大腸がんの発育および免疫動態の差異を明らかとした。また、syngenic 大腸がんmodelマウスに加え、化学発癌モデルマウスを使用し、解析を進めた。さらにMSCがNASHマウスにおいて肝星細胞への影響を開始、肝細胞の障害を軽減させていることを見出し、全国学会にて報告を行った。
本研究を継続させ、明らかとしつつあるNASHにおける腸管免疫へ影響を与える詳細機序とMSCによる治療効果について、学会並びに論文にて報告する予定である。
すべて 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
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