研究課題
若手研究
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の最大死因は、動脈硬化の進展による心血管病であるが、肝臓を介した機序は不明である。我々は、NAFLDモデルのマウスにおいて、動脈硬化の要因とされる血中アルギナーゼの活性上昇が、肝細胞から血中へ分泌されるエクソソーム内のアルギナーゼ1の上昇に依存することを発見した。本研究では、肝細胞由来のエクソソーム内のアルギナーゼ1が上昇する機序について詳しく追求することで、NAFLDの動脈硬化に対する新たな治療方法を見出すことを目的としている。
以前より高脂肪食食餌による脂肪肝モデルマウスの血中において、動脈硬化を促進するとされる血中一酸化窒素の低下が起きていること、アルギナーゼ1の上昇によるアルギニンの低下が原因であることを見出していた。このアルギナーゼ1の上昇はALTなどの肝酵素逸脱酵素とは相関しなかったことから、肝障害による逸脱ではなくエクソソームとして分泌されている可能性を仮説した。この方向性で解析を進めた結果、脂肪肝モデルマウスでは、エクソソームに含まれるアルギナーゼ1が、血糖に依存して肝臓から分泌されている可能性を見出した。この内容がLife Sciences 誌(IF3.6程度)にアクセプトされた。健常成人および糖代謝異常の患者血清を用いたpopulation studyについては、現在は血中エクソソームを抽出する前の段階で、臨床データとアルギナーゼとの関連性について解析中である。ヒトの血中アルギナーゼの由来に関する研究については、mRNAレベルでの解析を開始した。アルギナーゼ1は血液型と肝臓型の2つのアロザイムがあり、mRNAの時点で長さが違う。基本的には血球成分から作られるアルギナーゼ1のmRNAは血液型とされている。アルギナーゼによる全身のアミノ酸代謝は肝臓が担当していることと、高脂肪食食餌マウスの実験結果から、肝臓がアルギナーゼ1の分泌臓器の第一候補であると考えられる。しかし他施設からの報告では、網赤血球の段階で作られるアルギナーゼ1が赤血球から分泌されており、それが血中アルギナーゼを構成するという報告もある。よって肝臓以外の候補も念頭に、血中アルギナーゼの由来を調べる必要がある。そこで血液をpolymorphoprepおよびlymphoprepで血球分離して、各成分のmRNAが血球型か肝型かをPCRでの解析を開始した。
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Life Sciences
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Diagnostics
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