研究課題/領域番号 |
20K17094
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
北里 梨紗 北里大学, 医学部, 助教 (10868938)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 機械的減負荷 / 心筋細胞 / 心不全 / mTOR / アンジオテンシンII / リバース・リモデリング / 培養心不全モデル / 培養心筋細胞 / 補助人工心臓 |
研究開始時の研究の概要 |
移植適応のある重症心不全患者が増加の一途を辿る昨今、自己心の機械的減負荷をもたらす補助人工心臓(ventricular assist device, VAD)は不可欠である。一部の症例では、VAD装着後、心肥大や機能低下、線維化(remodeling)が正常化 (reverse)し、安定的回復に至るreverse remodeling (RR)が起こることが知られている。 機械的減負荷下のRRの分子学的機序は不明である。そこで、申請者は細胞の減負荷を可能にする3D培養システムを用いてこれを明らかにし、VAD装着時の心不全治療に関する研究を大きく進歩させたいと考える。
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研究実績の概要 |
我々の研究目的は、心筋細胞における機械的減負荷モデルを作成し、心不全状態において機械的減負荷が心筋細胞に与える影響を細胞分子学的に解明することである。機械的減負荷をもたらす条件作成にはRotary Cell Culture System (RCCS)と呼ばれる、市販の回転により微小重力における培養環境を作り出す三次元培養モデルを用いた。 2022年度は本研究において最も重要であるラット心筋細胞心不全モデルにおけるRCCSの条件を確定できた。具体的には、アンジオテンシン II刺激下でRCCSを用いて24時間培養した細胞と静置で培養した細胞では、RCCSを用いた細胞においてβMHCやBNPをはじめとした心肥大マーカーの上昇が抑制され、48時間後のウエスタンブロット法では4EBPやS6KなどのmTOR経路に関わる蛋白のリン酸化が抑制されていることを明らかにした。よって、RCCSにより機械的減負荷を模した状態では心筋肥大が抑制され、これにはmTORが関わるという重要なメカニズムが示唆された。 上記結果は2022年度日本循環器学会にて発表した。 現時点ではBridge to TransplantationからBridge to Recoveryとしての役割を待望されている、補助人工心臓等の、心臓に強力な機械的現負荷をもたらすディバイスであるが、我々の研究により機械的減負荷による心不全改善のメカニズムがさらに明らかになれば新たな心不全治療の一助となること、効果が期待できる患者の層別化に繋がるという大きなインパクトをもたると考えるられ、現時点での我々の研究成果は大きな意義を持つものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最大の難関であった、生着細胞である心筋細胞において、さまざまな工夫を行い、RCCSを用いた培養条件を確定できた。また、mTOR経路の関連も示唆され、今後ますます細胞シグナルの核心に迫って行くことができると考えている。当初はさらなる細胞シグナル解析も行える予定であったが、物品の納入の遅れや一時的な当部門の技術員が産休により不在が重なり、やや進行が滞った。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらなる細胞シグナル経路の解明及び一般的な心不全薬(RAS系阻害薬やβブロッカー、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬等)の効果を検証したいと考えている。また、当初はハイドロジェルによる心臓の微小環境再現を考えていたが、ヒト由来の心筋細胞でスフェロイドを形成したものであれば人間由来の素材でさらに生理的に近い環境での培養になるのではないかと考え、現在使用を進めている状況である。
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