研究課題
若手研究
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が普及しつつあるが、血栓弁は患者予後に関わる重要な問題である。本研究の目的は、①弁葉被膜損傷TAVI弁植え込みブタモデルを用い、急性期血栓弁はTAVI弁の被膜損傷による血小板血栓形成が主因であること、②前向きにフォローされたTAVI弁植え込み患者の剖検例を病理学的に検討し、慢性期血栓弁はTAVI弁-Aortic root間での組織応答による凝固系血栓が主因であることを明らかにする事である。本研究から、血栓弁の形成機序が明らかとなれば、人工弁植え込み手技および抗血栓療法の改良を通して、血栓塞栓症の予防につながり、患者予後を改善できると考えられる。
大動脈弁狭窄症(AS)に対する治療として、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が普及しつつあるが、TAVI特有の問題が存在する。中でも血栓弁は患者予後に関わる重要な問題である。我々は、弁葉被膜損傷TAVI弁植え込みブタモデルを用い、急性期血栓弁はTAVI弁の被膜損傷による血小板血栓形成が主因であること、前向きにフォローされたTAVI弁植え込み患者の剖検例を病理学的に検討し、慢性期血栓弁はTAVI弁-Aortic root間での組織応答による凝固系血栓が主因であることを 明らかにしようと考えた。しかし、TAVI後血栓弁症例が少なく、また治療技術の進歩によりTAVI周術期死亡例が非常に少なく、TAVI弁植え込み患者の剖検例の病理学的検討を実施できていない。 そのため、我々は代替研究として、以下の研究を実施した。ASでは、冠血流予備能(CFR)が影響され、CFR低下は予後不良の指 標であると報告される。TAVI直後や6ヶ月後のASのCFRの変化を検討した報告はみられるが、CFRがTAVI 1年後に改善するかは明らかにされていない。本研究の目的は、高度AS例におけるTAVI 1年後にCFRが改善しているか検討し、その改善に関与する因子を明らかにすることである。TAVIを施行された高度AS連続 例を対象 として、経胸壁心エコー図で計測されるLADの薬物負荷によるCFRを、TAVI術前、術翌日および1年後で比較検討した。本研究の結果、高度ASでは、TAVI 前と比較 して、TAVI後と1年後のCFRは経時的に改善し、CFRの上昇は最大充血時の冠血流速度の上昇によるものであった。術前の左室駆出率が低いが、1年後に心 機能の 改善が大きい、大動脈弁口面積が大きい、経弁圧較差が低い患者で、CFR上昇率が高い特徴が見られた。以上の研究内容は論文として掲載された。
3: やや遅れている
TAVI弁被膜損傷ブタモデルの血栓弁形成が想定外に認められず、実臨床においてもTAVI後血栓弁症例が少なく、また治療技術の進歩によりTAVI周術期死亡例が非 常に少なく、TAVI弁植え込み患者の剖検例の病理学的検討を実施できていないため。
TAVI後血栓弁症例が少なく、また治療技術の進歩によりTAVI周術期死亡率低下のため、TAVI弁植え込み患者の剖検例の病理学的検討を実施できていないことか ら、我々は代替研究として、以下の研究を実施した。ASでは、冠血流予備能(CFR)が影響され、CFR低下は予後不良の指標であると報告される。TAVI直後や 6ヶ月 後のASのCFRの変化を検討した報告はみられるが、CFRがTAVI 1年後に改善するかは明らかにされていない。本研究の目的は、高度AS例におけるTAVI 1年後 にCFR が改善しているか検討することである。TAVIを施行された高度AS連続例を対象として、経胸壁心エコー図で計測されるLADの薬物負荷によるCFRを、TAVI術前、術翌日および1年後で比較検討した。本研究の結果はヨーロッパ心臓病学会で演題発表を行い、論文として掲載された。
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