研究課題
若手研究
肺動脈性肺高血圧症(PAH)において、肺動脈のリモデリングは病態に重要な役割を果たす。リモデリングは病初期から進展するが、多くのPAH症例は血管病変が進行した状態で診断される。早期血管リモデリング同定に有用なバイオマーカーによって診断が可能となれば治療の更なる進歩が期待できる。細胞外マトリックス蛋白質であるペリオスチンは、組織の病的線維化形成に関わっており様々な疾患への関与が示されている。我々は、PAHの肺動脈リモデリングにペリオスチンが関与していると仮説を立て、早期血管病変を同定するバイオマーカーとして有用性と、さらには、抗リモデリング効果を有する治療標的としての可能性の検証を行う。
マトリックス細胞タンパクであるペリオスチン(POT)の肺高血圧症(PH)進展への関与を検証した。POTは、ヒト肺血管平滑筋および内皮細胞とマクロファージの遊走能を増加させた。VEGF受容体拮抗薬と低酸素刺激により誘導されたPHマウスにおいて、野生型と比較してPOT-/-マウスではPH進展およびM2マクロファージの肺動脈への集積が抑制され、肺動脈リモデリングも軽度であった。肺組織中のマクロファージ関連ケモカインや右心室におけるマクロファージ集積もPOT-/-マウスで減少していた。血清POT値は、PH患者で有意に上昇しており、予後予測因子として有用である可能性が示唆された。
肺動脈性肺高血圧症は、様々な治療薬の開発によって著しく予後が改善しているが、治療抵抗例では、肺移植が必要となる重篤な疾患である。特に重症例では、病態に血管リモデリングが強く関与することが知られているが、現在使用できる治療薬は血管拡張薬のみであり、リモデリングを標的とした新規治療薬の開発が待たれる。本研究は、細胞外マトリックス蛋白であるペリオスチンが、肺高血圧症モデルマウスにおいて、M2マクロファージを介して血管リモデリング進展に関与することを示した。この結果は、リモデリングを標的とした肺高血圧症の新たな治療戦略の進歩に貢献する可能性を含むと考えている。
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Respirology
巻: online ahead of print 号: 7 ページ: 00-00
10.1111/resp.14249