研究課題
若手研究
肺動脈性肺高血圧症とは肺血管リモデリングにより肺血管抵抗が増大した指定難病である。既存のPAH治療薬の導入により非遺伝性PAHの予後は大幅に改善されたが、BMPR2変異を伴う遺伝性PAHの予後は不良のままである。肺動脈平滑筋細胞(PASMCs)の細胞増殖抑制が遺伝性PAHの治療ターゲットと考えている。BMPR2変異PASMCsでは、小胞体ストレス応答の一つであるPERK-eIF2シグナリングが亢進する。抗うつ薬として上市されているトラゾドンに上記阻害作用を既に認めている。そこで、本研究ではトラゾドンの構造展開を行い、リード化合物の探索を目指す。
本研究は、BMPR2変異を伴う遺伝性肺動脈性肺高血圧症(PAH)の肺血管リモデリング(PVR)におけるPERK-eIF2シグナリングの分子病態の解明、及びPERK-eIF2シグナリングの新規阻害薬の創出を目的として開始した。PAHモデルマウス由来肺動脈平滑筋細胞(PASMCs)では、PERK-eIF2シグナリングを介してPDGFRβ陽性PASMCsの発現が亢進していることを確認した。トラゾドン及びその類縁体はPDGFRβ陽性PASMCsの発現を抑制すること、PVRを改善する結果となり、将来の創薬候補として期待される成果となった。
本研究成果により、PERK-eIF2シグナリングがPVRを促進するという新たな分子機構を示すことができ、この点において学術的意義の高い研究となった。既存のPAH治療薬の導入により非遺伝性PAHの予後は大幅に改善されたが、BMPR2変異を伴う遺伝性PAHの予後は不良のままであり、有効な治療法は肺移植に限定されている。日本では慢性的なドナー不足のため、肺移植に至る前に亡くなるケースが大半であり、本研究を礎にアカデミア発のオーファンドラッグ開発をすることができれば、社会的意義はインパクトのある結果となる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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