研究課題
若手研究
高血圧患者は本邦で4300万人をこえ、30歳以上の男性の60%、女性の45%が高血圧とされる。高血圧は心血管系イベントの重要なリスク因子となり、高血圧に肥満、耐糖能異常を合併するメタボリック症候群(MetS)を呈することよりさらにそのリスクは高まる。WNKキナーゼというリン酸化酵素は腎と血管において血圧制御に重要な役割を果たし、さらに脂肪分化や抗腫瘍効果のターゲットでもある。本研究ではリン酸化プロテオミクス用いて細胞内のリン酸化の変化を調べることで、WNKシグナルの網羅的解析を実施する。この明らかになったシグナルを制御することで高血圧や肥満などに対する治療薬開発へとつなげていく。
WNK1/4のダブルノックアウト細胞の作成は困難であったが、腎集合管培養細胞においてAQP2の機能亢進に重要と推定されるミオシン軽鎖キナーゼ(MYLK)をCRISPR-Cas9ゲノム編集技術を応用してノックアウトし、リン酸化プロテオミクスを施行し解析した。その結果、MYLKは従来知られていたミオシン軽鎖をリン酸化するだけでなく、種々の細胞骨格および小胞輸送に関わる働きをしていることが明らかになった。実際にMYLKをノックアウトした腎集合管細胞ではAQP2の頂側膜からのエンドサイトーシス後の小胞輸送が障害されており、AQP2の機能調整にMYLKがどのように作用しているか明らかにすることが出来た。
今回我々はCRISPR-Cas9ゲノム編集技術とリン酸化プロテオミクスを用いてMYLKの細胞内リン酸化シグナルを詳細に解明することができた。MYLKは従来ミオシン軽鎖をリン酸化しミオシンの機能を調節する機能しか知られていなかったが実際には多岐にわたる機能があることが判明した。細胞内シグナルの解明により新たな創薬につなげていく重要な情報基盤となる。また、この手法は細胞内の特定のリン酸化酵素の役割を詳細に解明することが出来、新たなシグナル伝達を発見することにつながることが証明されたといえる。
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