研究課題
若手研究
本邦の慢性腎臓病(CKD)患者数は1330万人と推計され、CKDの進展予防・予後改善のための治療法開発が喫緊の課題となっている。塩分感受性高血圧はCKDに高率に合併し、心血管病変およびCKD進行の強いリスク因子である。当教室ではこれまでにWNKキナーゼが塩分感受性高血圧をきたすことを明らかにしてきた。一方、慢性炎症はCKDの病態に関与することが知られている。最近、我々はCKDモデルマウスにおいてWNKが活性化され、その事象に炎症シグナルが関与している結果を得た。本研究は、CKDにおける炎症・免疫機構とWNKとの関連およびその制御機構を明らかにし、塩分感受性高血圧の新規治療薬の開発を目指す。
CKD マウスモデルを用いて、WNK シグナルと塩分感受性を評価した結果、CKD マウスモデルの一部で WNK1-SPAK シグナルが亢進し塩分感受性高血圧発症に関わっていることを発見した。 炎症性サイトカインの一つである TNFαが WNK1- SPAK シグナルの亢進に関わっていることが示唆され、WNK1-SPAK シグナルが亢進している CKD マウスモデルに TNF阻害薬を投与したところ、CKD 腎臓で産生が増加した TNFαは WNK1 蛋白の分解を担うNEDD4-2の発現を抑制し、増加した WNK1 蛋白が塩分再吸収を増加させて塩分感受性高血圧を惹起していることが明らかになった。
本研究は、WNK シグナルが免疫機構による血圧制御メカニズムの一端を担っており、CKD の塩分感受性亢 進に関わっていることを世界に先駆けて明らかにした。CKDではNCCの阻害薬であるサイアザイド系利尿薬の効果に個人差があることが知られており、サイアザイドの有効なCKDでTNFα-WNK1-SPAK-NCC シグナルが活性化している可能性が示唆された。そのため、腎臓でのTNFα産生の評価は腎機能の低下した患者個々に対する適切な降圧療法選択に有用と考えられた。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Scientific Reports
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10.1038/s41598-021-81287-4
Kidney International
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