研究課題/領域番号 |
20K17300
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53040:腎臓内科学関連
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
谷 崇 日本医科大学, 医学部, 助教 (30714555)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 血管中膜石灰化 / 慢性腎臓病 / 組織非特異型アルカリフォスファターゼ / CKD-MBD / 血管石灰化 / アルカリフォスファターゼ / リン |
研究開始時の研究の概要 |
血管中膜石灰化は血管壁の中膜と呼ばれる部位が石灰化し、中~大血管が石の様に硬化してしまう病態として知られる。慢性腎臓病、糖尿病、高齢者などに多く合併し、心不全の発症や高い死亡率との密接な関連があるが、現在有効な治療・予防法はない。血管中膜石灰化の形成時には、血管平滑筋細胞が骨芽細胞の様な性質を獲得(形質転換)し、血管中膜で正常骨組織の様に能動的な造骨が起きると推測されている。本研究は、骨化に関与する組織非特異型アルカリフォスファターゼの阻害薬を中心に、血管中膜石灰化抑制・予防作用を持つ新規治療薬を検証することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本検討では10週齢のC57BL/6Jマウスに0.2%(w/w)アデニン(0.8%リン)含有の特殊食を6週間負荷し、腎不全を惹起した。次に、16週齢より食餌を0.2%(w/w)アデニン含有1.8%リン含有の高リン負荷食に変更し10週間負荷することで、高リン血症とMACを呈する実験動物モデルを作成した。非治療群(Vehicle群)では薬剤投与は行わず、治療群のSBI-10群, SBI-6群, SBI-4群では0.03%(v/v)のTNAP特異的阻害薬であるSBI-425を混餌し、CKDモデルのリン負荷開始(16週齢)からそれぞれ10, 6, 4週間行った。 実験終了時の血中尿素窒素、血清クレアチニン、血清リン、FGF-23、intact PTHはControl群に対して顕著に上昇していたが、CKD群間で有意差は認めなかった。 全身単純CT画像ではVehicle群で大動脈、心臓、両側腎臓など軟部組織に異所性石灰化が観察され、その石灰化体積(mm3)は高リン食負荷開始後経時的に増悪した。一方、Control群、SBI-10群では実験期間を通じて殆ど異所性石灰化を認めなかった。SBI-6群、SBI-4群ではVehicle群と同様に異所性石灰化を認めたが、いずれの群でも薬物治療介入の開始以降は全ての部位の異所性石灰化がVehicle群に比して抑制される傾向であった。 大動脈・腎病理組織ではCKDモデル群でVon-kossa染色陽性の異所性石灰化を認めた。組織中の石灰化エリア面積比(%)はVehicle群で最も高度な血管中膜石灰化(MAC)・腎石灰化を認め、その重症度は大動脈、腎臓ともにVehicle群>SBI-4群>SBI-6群>SBI-10群の順となり、大動脈・腎臓の石灰化はSBI-425による治療期間の長さと反比例の関係をとることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に新型コロナウイルス感染症蔓延により実験遂行が困難を極めたこと、また共同研究施設からの薬剤提供などが困難な状況に陥ったため実験予定が遅延している。その後は概ね順調に経過している。
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今後の研究の推進方策 |
SBI-425による治療を高リン食負荷と同時に開始したSBI-10群では大動脈石灰化を殆ど認めなかったことから、TNAP特異的阻害薬の混餌投与による持続的なTNAP活性抑制がMACに対して予防効果を示すことが示された。 また、高リン食負荷開始より4、6週経過後よりSBI-425による薬物治療を開始したSBI-6群、SBI-4群でも大動脈、腎臓における異所性石灰化がVehicle群と比較して抑制される傾向が動物CT画像と病理組織の解析結果より示唆された。実験終了時の異所性石灰化の重症度は病理組織、動物用CT画像いずれでもVehicle群>SBI-4群>SBI-6群>SBI-10群の順となっていたことから、SBI-425による治療は薬剤投与期間に比例して効果を示し、既存のMACが存在した場合にもMACの進展抑制効果を示すことが示唆された。 また、本モデルマウスは低カルシウム血症と総ALP活性高値、intact-PTH高値と続発性副甲状腺機能亢進症の状態であり、過去の報告と同様の結果であった。これらの結果からは本動物モデルが高リン血症と高FGF-23血症も伴う典型的なCKD-MBDモデルとしての汎用性・再現性が高いことが改めて確認された。 今後は、動脈組織中のカルシウム濃度の定量(OCPC Assay)や血管組織・血漿中のTNAP活性、リアルタイムPCR法を用いた骨化関連遺伝子のmRNA発現量などを順次検討し、SBI-425によるTNAP阻害作用が異所性石灰化に与える影響を多面的に評 価してゆく予定である。
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