研究課題
若手研究
一部の血液疾患の根治に不可欠な同種造血幹細胞移植 (HSCT) で生じうる深刻な合併症として、ドナー細胞の生着不全 (GF) や機能不全 (PGF) が挙げられるが、その原因やリスク因子には未解明な点が多い。Mer受容体とそのリガンドGas6から成るシグナル伝達経路は、自己免疫疾患や血栓性疾患に関与することが知られている。我々はMer阻害剤がHSCTマウスモデルで生着率の向上に寄与するとの予備的知見をもとに、Gas6-Merを標的としたGF/PGFの予測マーカーの同定、予防や治療法の探索的研究を行う。
本研究では,同種造血幹細胞移植 (HSCT) 合併症である生着不全 (GF)・移植片機能不全 (PGF) における,受容体型チロシンキナーゼMerとそのリガンドGas6の役割を明らかにした.血管内皮傷害がGF/PGFを惹起するとの仮説から,培養細胞やマウスを用いた実験で,Gas6/Mer阻害剤投与による血管内皮保護的な介入がGF/PGFの予防・治療につながるか検討した.Gas6/Mer阻害による造血幹細胞の増殖・分化の促進や,生着への有益な効果を確認することはできなかったが,ヒト造血幹細胞を用いてウイルス感染病態を再現した生着不全モデルを構築することができた.
GF/PGFは時に致死的な,HSCTの成否を左右しうる重要な合併症であるが,その予測は困難で,予防・治療法は確立していない.これまでGas6/Merは,炎症応答や血管内皮障害を介してHSCTに伴う血栓性微小血管症や移植片対宿主病に関与し,Gas6/Mer阻害がこれらの治療標的となる可能性が示唆されてきた.今回の研究により,類似した分子病態を共有すると考えられるGF/PGFでは,Gas6/Mer阻害の有効性が不十分で,臨床応用にあたっては移植片への負の作用を考慮する必要性が明らかとなった.また今後のGF/PGF研究のさらなる展開可能性を秘めた実験モデルの構築に寄与した.
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