研究課題
若手研究
AMLの発症には、複数の転写因子の機能破綻が大きく関わっているが、これらがどのように相互作用しているかは明らかではない。我々は骨髄細胞分化を司る転写因子であるC/EBPα変異と転写抑制因子Bcl11aによるPU.1の機能阻害が協調してAMLを悪性化させるというモデルを着想した。本研究では、C/EBPα変異とBcl11aが協調してAMLを発症させることを証明し、さらにはエンハンサー活性の変化を介して、これらが協調してAMLを発症・悪性化させるメカニズムを解明する。以上から、AMLにおけるC/EBPα変異/Bcl11aの協調作用を示し、AML発症・悪性化の分子基盤を解明する。
Trib1により分解されるC/EBPαとBcl11aによるPU.1の機能阻害が協調し、AMLの発症や悪性化を引き起こすという新しい概念を証明することを目的として、本研究を開始した。まずAMLにおいてBcl11aがリクルートするコリプレッサーとして、LSD1、HDAC1/2を同定し、これらの阻害剤がBcl11a発現AML細胞特異的な腫瘍抑制効果を有することを示した。またBcl11a新規標的遺伝子として、E3ユビキチンリガーゼAsb2を同定し、Bcl11a-Asb2-Filamin経路を介したAML細胞の骨髄生着促進により、Bcl11aがAMLの発症・増悪を引き起こすことを明らかにした。
C/EBPαとPU.1は顆粒球系・単球系細胞の分化において競合的に働くとされており、これらの異常が協調してAMLを誘導するという先行研究はこれまでにない。また今回、同定したBcl11a新規標的遺伝子Asb2のAMLにおける役割については、これまでに十分な検討がされておらず、本研究成果の学術的意義は高い。LSD1/HDAC阻害剤がAMLに有用であることが、複数の臨床試験により証明されており、Bcl11aはLSD1/HDAC阻害剤の治療効果予測因子となりうる。またBcl11a-Asb2経路を治療標的とすることでAMLの新規治療法開発につながる可能性があり、本研究で得られた成果は社会的意義も高い。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
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