研究課題/領域番号 |
20K17466
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
賀来 敬仁 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40770491)
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研究期間 (年度) |
2022-12-19 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 細菌性肺炎 / 肺胞上皮細胞 / 重症細菌性肺炎 / 免疫調節作用 / 肺炎 / 重症化抑制 / 重症化 / 予防 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、細菌性肺炎の重症化メカニズムを解明することを目的に、重症細菌性肺炎マウスの肺組織から単離した肺胞上皮細胞の遺伝子発現を網羅的に解析し、細菌による肺胞上皮細胞の変化および急性呼吸促迫症候群(ARDS)発症に関連する因子を明らかにする。また、in vitroの研究で肺胞上皮細胞に対する抗炎症作用を報告されている薬剤がin vivoでも同様の作用を示すのか検証し、その作用メカニズムを解明することで将来の創薬につなげる。
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研究実績の概要 |
予備研究においては、ddYマウスを用いて経気管投与で緑膿菌肺炎マウスモデルを作成して、検証を行っていた。ddYマウスについては、クローズドコロニーとして維持されている非近交系マウスであり、細菌自体の病原性や抗菌薬の効果などを確認するのには適している。しかし、メカニズムを解明する場合にはその遺伝背景の不均一性が問題となる。本研究ではメカニズムの解明まで行うため、近交系マウスを用いたモデルを作成する必要があった。そこで本年度は、近交系マウスであるC57BL/6JマウスおよびBALB/cJマウスを用いて細菌性肺炎マウスモデルを作成した。C57BL/6JマウスではKlebsiella pneumoniaを経気管投与し、BALB/cJマウスでは緑膿菌を経気管投与して肺炎マウスモデルを作成した。 本研究では、マウスの肺組織から細胞を単離して行うsingle cell RNA sequencing (scRNAseq)を用いて、肺の各種細胞での遺伝子発現を解析する方法を確立した(Wang F, Kaku N, et al. Journal of Clinical Investigation e165612, 2023)。しかし、scRNAseqであっても本研究の主な解析対象であるI型およびII型肺胞上皮細胞については、肺内に存在すると考えられる割合からすると非常に低い細胞数しか解析できなかった。これは、これらの細胞が単細胞懸濁液を作成する過程でダメージを受けやすいためだと考えられた。そこで、細胞ではなく核酸を用いて遺伝子発現を解析するsingle nucleus RNA sequeincing(snRNAseq)を検証した。マウスの肺組織を用いてsnRNAseqを実施したところ、scRNAseqよりもより多くのI型およびII型肺胞上皮細胞を解析することができ、より適切な解析系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために、、①細菌性肺炎マウスモデルを作成し、②マクロライド系抗菌薬やオキサゾリジノン系抗菌薬による肺炎の重症化抑制を検証する。そして、非感染マウス(コントロール)、感染マウス、抗菌薬を投与した感染マウスの③肺から肺胞上皮細胞を単離し、④トランスクリプトーム解析を行って、細菌性肺炎における肺胞上皮細胞の変化およびARDS発症に関連する因子を明らかにすることとしていた。現時点では、①細菌性肺炎マウスモデルおよび②の抗菌薬による肺炎の重症化抑制については、ddYマウスでの検証は完了している。しかし、ddYマウスでは③肺から肺胞上皮細胞を単離することが難しかった。また、非近交系マウスで遺伝背景の不均一性の問題により、④のトランスクリプトーム解析で再現性のある結果が得られない可能性があった。そこで、当初の予定から変更して近交系マウスであるBALB/cJマウスでの細菌性肺炎マウスモデルの作成を新たに行った。また、当初はセルソーターを用いて肺胞上皮細胞を単離し、RNA sequencingでトランスクリプトーう解析をする計画であったが、その後にsingle cell RNA sequencingが普及したこともあり、計画を変更して③と④を一括して行えるsingle cell RNA sequencingの系の確立を行った。それでも上皮系細胞の回収率が低いという問題があったため、single nucleus RNA sequencingの系の確立まで行っている。このように、当初の計画から変更はあったものの、本研究の目的を達成するための実験全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
BALB/cJマウスでの肺炎マウスモデルの系は確立したため、マクロライド系抗菌薬での重症化抑制効果の検証を行っていく。重症化抑制効果が認められれば、研究計画に従って、感染マウス、抗菌薬を投与した感染マウス、非感染マウスの抗菌薬投与群・非投与群の4つの群から肺組織を摘出し、single neucleus RNA sequencingを用いたトランスクリプトーム解析を行う。また、細菌感染マウスでは肺胞上皮細胞へのダメージが大きく、single nucleus RNA sequencingでも十分な量の肺胞上皮細胞の核が検出できない可能性もある。その場合はLipopolysaccharideを用いたARDSモデルや固定した組織からsingle cell RNA sequencingが実施できる試薬などの検討を行っていく。
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