研究課題/領域番号 |
20K17501
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
飯田 雅 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60751146)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | プロインスリン / インスリン / 糖脂肪毒性 / V-ATPase / 糖尿病 / PC1/3 / PC2 / プロインスリンプロセシング / 糖毒性 / 脂肪毒性 / 分泌顆粒内環境 / プロホルモン変換酵素 / 2型糖尿病 / 分泌顆粒酸性化 / GLP1製剤 |
研究開始時の研究の概要 |
2型糖尿病の発症過程における、インスリン生合成障害を検証する。糖質・脂質の過剰摂取が、糖毒性・脂肪毒性として膵β細胞におけるインスリン生合成にどのように影響を与えるかを細胞培養実験で解明する。また現在臨床利用されているGLP1製剤が、この過程にどのように保護的に作用するかを動物実験で解明する。これらにより新規創薬の標的機序の発見を目指す。
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研究実績の概要 |
プロインスリンは膵β細胞分泌顆粒内においてProhormone Convertase 1/3(PC1/3)及び2(PC2)により切断され、C-peptideとインスリンに分かれる。血中プロインスリンの上昇はこれらの酵素機能の障害を示唆し、膵β細胞機能障害を臨床的に評価する指標の一つである。PC1/3とPC2は共に前駆体として生成され、その成熟と酵素活性は共に分泌顆粒内酸性環境とカルシウムに依存するため、酵素機能障害は分泌顆粒内環境の変化を示唆する。本研究は2型糖尿病発症に関与する糖脂肪毒性がプロインスリンプロセシングに及ぼす影響を、PC1/3とPC2の酵素機能障害の観点から明らかにすることを目的とする。 C57BL/6マウスから単離した膵島と膵β細胞系腫瘍株であるMIN6細胞に高濃度グルコース及び飽和脂肪酸を負荷し,糖脂肪毒性によるプロインスリンプロセシングの障害を検証した。 電子顕微鏡による形態学的検討では、プロインスリンの蓄積を示唆する未成熟分泌顆粒の全顆粒数に対する割合が増加を確認した。分泌顆粒関連タンパクであるPhogrinにGFPを融合させたタンパクを発現するMIN6細胞に対してpH指示薬で標識したところ、糖脂肪毒性による刺激は分泌顆粒内酸性度を低下させた。オルガネラ内の酸性化に重要な役割を果たすV-ATPaseは2つのドメインが結合しその機能を発揮するが、糖脂肪毒性によりこれらのドメインの結合が障害されることを細胞分画法と近接ライゲーションアッセイで確認した。肥満糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスから得られた単離膵島ではプロインスリンタンパクの蓄積を確認した。 これらの結果より糖脂肪毒性はV-ATPase機能を障害し分泌顆粒内酸性化を阻害することで、プロセシングエンザイムの酵素機能を低下させ、プロインスリンプロセシングを一部障害することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年は主に肥満糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスを用いて、in vivoにけるプロインスリンプロセシング障害の検証を進めるとともに、in vitroでは糖脂肪毒性によるプロセシング障害の詳細な機序の解明を進めた。 db/dbマウスにおいては血中プロインスリン濃度が上昇し、また腹腔内グルコース負荷試験中におけるプロインスリン分泌も亢進し、インスリン需要が高まった際にインスリンが未成熟の状態で分泌されることを明らかにした。db/dbマウス単離膵島を電子顕微鏡により形態学的に評価したところ、未成熟分泌顆粒数の割合が増加し、ウエスタンブロット法ではPC1/3、PC2それぞれの高活性体のタンパク量が減少し、プロインスリンの蓄積を認めた。 分泌顆粒内酸性化に重要な役割を果たすV-ATPase機能が糖脂肪毒性により障害されると仮説を立て、MIN6細胞を用いて検証した。分泌顆粒膜タンパクであるPhogrinにGFPを癒合させたタンパクを発現するMIN6細胞株を樹立し、オルガネラ内に取り込まれ酸性度に応じて蛍光強度を増強させるpH指示薬を用いて、分泌顆粒内酸性度を蛍光顕微鏡により評価した。これらにより糖脂肪毒性により分泌顆粒内酸性化障害を明らかにした。またV-ATPaseは2つのドメインが結合しプロトンポンプの機能を発揮するが、この結合が糖脂肪毒性により障害されることを近接ライゲーションアッセイと細胞分画法を用いて示した。そしてこの結合阻害にはV-ATPaseの膜タンパクにおけるPalmitoylationの関与があることをAcyl-Biotin Exchangeアッセイにより明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は糖脂肪毒性によりV-ATPaseの機能障害の原因機序としてPalmitoylationに着目し、より詳細な解明に向けて研究を進める方針である。Palmitoylation阻害薬やDepalmitoylationを促進させる薬剤を負荷し、糖脂肪毒性による分泌顆粒内酸性化障害やプロインスリンプロセシング障害が可逆性を持ち改善可能か分子生物学的検証を進める。 また肥満糖尿病モデルマウスであるdb/dbマウスにおけるプロインスリンプロセシング障害の検証をさらに進め、in vtroで得られた結果との整合性を確認する。 また今年度中に論文を執筆し投稿予定である。
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