研究課題
若手研究
近年、糖尿病治療では、糖尿病合併症の予防を目的として、血糖変動の抑制が注目されている。これまで、インスリン治療による血糖変動の抑制が合併症予防しうるかについては、十分な評価が行われておらず、既存のインスリンポンプ療法を動物実験に適応することは技術的に困難であった。そこで、研究代表者らは、独自に開発した「フェニルボロン酸を主要な成分とするグルコース応答性ゲル」を用いた人工膵臓様デバイスを糖尿病モデル動物に装着し、血糖変動や血管内皮の酸化ストレス、骨髄細胞の動態に及ぼす影響を検討する。これにより、次世代型のインスリン治療による糖尿病合併症の発症・進展抑制の可能性が明らかになると期待できる。
インスリン療法は糖尿病治療の根幹を成すが、QOLを損なう上、低血糖の危険を有する。また近年では、平均血糖の高値に加えて、血糖変動が糖尿病血管合併症のリスクになることが報告されている。そのため、血糖応答性にインスリンを放出し、血糖変動をきたさない人工膵臓様デバイスの開発が求められている。そこで我々は、グルコース濃度に応答して物理的性質が劇的に変化するフェニルボロン酸を含む高分子ゲル(ゲル)を利用して、エレクトロニクスフリーで操作が簡便な、人工膵臓様デバイスを開発した。本研究では、デバイスの効果と安全性、および血糖変動への影響を評価するとともに、臨床応用の可能性について検討した。
近年の糖尿病治療では、単に血糖値を低下させるだけではなく、糖尿病合併症の予防に重点が置かれている。従来のインスリン治療は、糖尿病治療の根幹を成す一方で、患者や介護者のQOLを著しく損なう上、意識障害等の重篤な症状に繋がる低血糖の危険性を有する。本研究の成果により、エレクトロニクスフリーで高い機能性と安全性を有し、安価でコンパクトなインスリンデバイスの開発が実現し、糖尿病に対するインスリン治療のアンメット・メディカル・ニーズに応えることができる。特に、自律的なインスリン放出機能による低血糖や血糖値変動の抑制、高インスリン血症の軽減は、糖尿病合併症の予防に繋がると期待される。
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Commun. Biol.
巻: 3 号: 1 ページ: 313-313
10.1038/s42003-020-1026-x