研究課題
若手研究
身体活動低下や不動化はサルコペニアの重要な促進要因であるが、これらの要因が筋量減少を促すメカニズムの詳細は明らかでない。本研究では、骨格筋のCa2+を可視化できるバイオイメージング法を確立し、筋細胞内Ca2+の動態を解析する。また、骨格筋特異的にCa2+シグナルを遮断可能なマウスを作成し、Ca2+シグナルが基底状態より低下することにより、KLF15経路を介した筋萎縮が生じることを証明する。
不動化による筋萎縮の分子機構について解析した。転写因子KLF15は不動化性筋萎縮における重要な制御因子であり、KLF15の上流の制御機構として「基底状態より低下したCa2+シグナル」が関与することを明らかとした。また、不動化性筋萎縮に関わる責任Ca2+チャネルとしてメカノセンサーであるPiezo1を同定し、不動化ではPiezo1の発現低下によって細胞外からのCa2+流入が減少してCa2+シグナルが低下し、KLF15の発現増加を通じて筋萎縮が生じることが明らかとなった。
不動化では基底状態以下へのCa2+濃度の低下が筋萎縮の引き金になると考えられたが、Ca2+濃度が「基底状態以下に低下」することによって発動する生命現象を初めて同定した。また、新規に確立した骨格筋Ca2+バイオイメージング法は各種の筋・神経疾患の研究に応用できる可能性があり、本研究によって同定されたPiezo1/KLF15経路は運動とは独立した不動化固有のシグナルであることから、新規な観点からの筋萎縮抑制薬の開発に繋がる可能性があると考えられた。
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Journal of Clinical Investigation
巻: - 号: 10 ページ: 1-13
10.1172/jci154611