研究課題
若手研究
NETsが、がん微小環境において、腫瘍浸潤マクロファージ(TAM)や樹状細胞(DC)への分化を制御すること、エフェクターT細胞の腫瘍内浸潤を抑制することで、がんに対する免疫応答に重大な影響を与え、がんの進行を促進する作用を有しているのではないか?という仮説を設定し、その正当性をIn vitro実験とヒト消化器癌切除標本の免疫染色で検証する。また、免疫チェックポイント阻害抗体の治療効果は腫瘍内のT細胞の浸潤に強く依存している事実から、DNAseの併用でNETsを分解することで、チェックポイント阻害薬の治療効果がどう変化するか?を明らかにする。
末梢血好中球をLPS で刺激して作成したNETsは単球からM2マクロファージへの分化を阻害し、T細胞の増殖を回復する作用を有していた。一方で、NETsは活性化T細胞のCXCL-11に対する走化性を強く抑制した。ヒト大腸癌組織中のNETsの密度はCD3(+)CD8(+)T 細胞の密度と逆相関していた。これらの事実から、固形腫瘍内のNETsはがんを促進する作用と抑制する作用の両方を有しており、固形腫瘍の切除標本におけるNETsの定量は免疫療法に対する感受性や患者予後と相関する可能性があると考えられた。
がんの進展に対する好中球の役割とその機序は十分に解明されていない。本研究にて、活性化好中球由来のNETsがマクロファージの分化を制御すること、活性化Tリンパ球の浸潤を抑制することが新たに判明した。また、ヒト大腸癌切除標本の免疫染色にて、NETsの量がCD8(+) T細胞の浸潤度と逆相関することから、NETsの定量が免疫チェックポイント阻害療法の感受性と相関する事実が解り、臨床応用への道が開かれたという点で社会的意義も大きいと思われる。
すべて 2023 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件)
BJS Open
巻: 7 号: 1
10.1093/bjsopen/zrac154
Heliyon
巻: 8 号: 6 ページ: e09730-e09730
10.1016/j.heliyon.2022.e09730
The Journal of Immunology
巻: 205 号: 5 ページ: 1393-1405
10.4049/jimmunol.2000217