研究課題
若手研究
食道癌に対する治療戦略の研究は広くおこなわれているが、日本での5年生存率は約40%、特にステージ3以上においては30%を下回る。癌の進展において、癌細胞のみでなく癌間質が極めて重要な役割を果たすことが近年の研究の成果から明らかになりつつある。現在、食道癌の癌間質に注目したバイオマーカーや癌細胞と間質との相互作用についての報告は少ない。本研究では食道癌間質における癌関連線維芽細胞(CAF)が発現する3種類の癌関連分子に注目する。150症例を超える食道癌臨床サンプルの解析により食道癌の発癌、浸潤、転移での癌間質の役割とCAF由来の3分子の臨床的意義に迫り、個別化医療への価値を追求する。
本研究では食道癌における癌間質の役割と癌関連線維芽細胞CAFに由来するVCAN、POSTN、LUMの臨床的意義に迫り、微小環境バイオマーカーとしての価値を追求し個別化医療への道を開くことが本研究の目的である。食道扁平上皮癌 (ESCC) 手術後症例においてCAF関連分子、VCAN、POSTN、および LUM の発現を調査し、食道切除術を受けた106人のESCC患者を対象とした。癌間質でのVCAN、POSTN、または LUM の高発現症例では、無再発生存期間および全生存期間が有意に低下していた。またVCAN または LUM の高い発現は、患者における無増悪生存期間の独立した予後因子であった。
癌間質におけるVCAN、POSTN、またはLUMの高発現レベルは、ESCC症例の無再発生存期間および全生存期間の低下と有意に関連していた。また間質VCANまたはLUM の高発現は、無増悪生存期間の独立した予後因子であった。本研究は、特にVCANおよびLUM の間質発現が、術後ESCC患者における再発予測のバイオマーカーとして臨床的に有用である可能性があることを示した。今後、根治切除術を受けた食道扁平上皮癌症例において、現在の術後補助化学療法の適応となりうる集団から、より再発リスクの高い集団での治療を選択できうる可能性を示した。今後さらなる研究を進めることで実臨床での応用を期待する。
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Oncology Letters
巻: 21 号: 6
10.3892/ol.2021.12706