研究課題
若手研究
心臓血管外科術後の大量出血は手術成績の悪化や医療費の負担増をもたらす。背景に複雑な未解明の病態があり、最終的な対策は輸血療法に頼らざるを得ない。心臓血管外科手術における輸血製剤使用量を減らすことは社会的にも求められるが、血液代替物の実用化は解決策となりうる。研究協力者らが開発したH12-(ADP)-リポソームは、完全合成による血小板代替物である。本研究においては、心臓血管外科術後出血制御を目的としたH12-(ADP)-リポソーム投与の臨床応用にむけた具体的な検討を行う。
心臓血管外科術後出血制御を目的とした人工血小板製剤H12-(ADP)-リポソーム投与の臨床応用にむけ、本研究ではH12-(ADP)-リポソーム治験実施のための事前検討を行った。人工心肺を用いた心臓血管外科手術患者を対象に周術期の血液検体を用いて、生体外でH12-ADP-リポソームが凝固障害に与える影響の検討を行った。その結果H12-(ADP)-リポソームは過剰な血小板活性化や過凝固状態などは引き起こさず、一定の安全性を示すことが分かった。H12-(ADP)-リポソームは人工心肺使用心臓血管外科手術患者に安全に使用でき、重大な副作用を引き起こすことなく出血部位の止血に貢献できることが示唆された。
我が国では近い将来少子高齢化のため、献血に依存する血液製剤の不足が予想されるが、人工血液製剤は有効な代替物として期待される。人工血小板製剤H12-(ADP)-リポソーム投与は、心臓血管外科手術患者に重大な副作用を引き起こすことなく安全に使用できることが示唆された。本研究は、来る世界初の人工血小板製剤の臨床応用に向けた有益な成果をもたらした。
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