研究課題/領域番号 |
20K17899
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 神戸大学 (2021-2022) 徳島大学 (2020) |
研究代表者 |
中西 信人 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (20793376)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 神経筋電気刺激療法 / 筋肉 / 筋萎縮 / 社会復帰 / 集中治療後症候群 / 超音波 / タイチン / 振動療法 / リハビリ / リハビリテーション / 代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
ICUに入室する重症患者は1週間で上肢が13.2%から16.9%、下肢が18.8%から20.7%の筋萎縮をきたす。早期リハビリテーションが重要であるが、実際には全ての重症患者で十分なリハビリテーションができていない。本研究の目的は神経筋電気刺激療法(EMS:Electrical muscle stimulation)を従来のリハビリに併用することにより重症患者の筋萎縮・筋力低下を予防するか、さらには代謝状態を改善するかを検討することである。これらを検討することで重症患者の社会復帰に貢献できると考えている。
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研究実績の概要 |
集中治療室での神経筋電気刺激療法の介入と長期予後調査の研究は順調に進行しており、神経筋電気刺激療法は安全に集中治療室で使用できている。長期的な身体機能調査のためにICUに入室した患者に予め退院数ヵ月後に身体機能の状態を調査する旨を説明し、携帯電話のショートメッセージサービスにアンケートを送りオンラインで状態を記入して頂いている。神経筋電気刺激療法は集中治療室での筋萎縮予防、身体機能改善、代謝機能改善に寄与することが明らかとなってきており、長期的な影響を引き続き調べていく。筋萎縮予防の評価としては超音波を用いた筋肉量評価が有効であり、理学療法士などのスタッフなどと超音波を用いた筋肉量評価の方法を共有して、上腕と下肢の筋肉の適切な評価に努めている。また尿中のタイチンという物質が筋肉の崩壊を評価するのに有効であり尿中のタイチンが神経筋電気刺激療法でどのようになるかなども調べている。代謝機能としてはメタボローム解析を用いて血液中のアミノ酸がどのように変化するかを引き続き調べている。身体機能評価としては理学療法士と協力してICU退室時に身体機能がどのようになるか、CPAx (The Chelsea Critical Care Physical Assessment Tool) などの身体機能評価のスケールを用いて評価している。神戸大学のデータを調査した研究では70%、60%、35%の患者が退院3ヵ月、6ヵ月、1年後に集中治療症候群というICU退室後の機能障害に至っていることを論文で報告した(PMID: 36142904)。さらにメタアナリシスなどの方法も用いて神経筋電気刺激療法が重症患者に有効であるかの検討も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重症患者において神経筋電気刺激療法を数十人の患者さんに使用することができている。当初は筋肉量評価の方法の確立や長期フォローアップの方法などに難渋していたが、そちらも解決できている。筋肉量評価の方法としては体組成計、超音波、CT検査など様々な方法があるものの、体組成計は水分に影響されやすい、CT検査は移動のリスクをともなうなどのデメリットがあり超音波での筋肉量評価を行っている。しかし、筋肉量評価のデメリットとしては測定者の技術に影響されやすいという難点もあり、十分な教育が必要であることも論文として報告した(PMID: 36142904)。実際に神戸大学でも超音波による筋肉量評価の方法に関して教育を行っており、筋肉量評価を正確にできるようになっている。さらに長期フォローアップのシステムの構築もすでにできており、重症患者の退院後に定期的にショートメッセージサービスでアンケート用紙を記入して頂いている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は神経筋電気刺激療法が長期的に有効であるか研究を継続していく。短期的には神経筋電気刺激療法が有効であることが分かってきたが、長期的な影響は明らかでない。引き続き重症患者の長期フォローアップを継続していく。神経筋電気刺激療法を継続していくうえで、神経筋電気刺激療法のチクチクする電気刺激を不快に感じる患者もいるため、そのような電気刺激のチクチク感に適切に対応することが課題である。電気刺激の粘着パッドを大きくして電気刺激を分散させる、また電気刺激の刺激電位を弱くして不快感を感じなくさせるなどの対策を行っている。神経筋電気刺激療法は重症患者でも安全に使用できており、引き続き重症患者のリハビリテーションをすすめ、長期的に社会復帰につながるかの研究を継続していく。また当研究課題の科研費最終年度になるにあたり、神経筋電気刺激療法に関して学会発表や論文発表などをつうじて、重症患者におけるリハビリテーション補助機器として有効かどうか社会に発信していく。
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