研究課題/領域番号 |
20K17940
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
秋葉 ちひろ 順天堂大学, 医学部, 助教 (40837754)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | LRG / 海馬 / 記憶 / モデルマウス / 行動実験 / モデル作製 / LRG発現 / タモキシフェン / 糖蛋白LRG / 慢性炎症 / 加齢 / 認知機能 / 遺伝子組み換えモデルマウス |
研究開始時の研究の概要 |
認知症のリスク因子である加齢や動脈硬化の病態基盤には慢性炎症がく関与する。申請者はこれまで、種々の炎症性疾患に伴い血中で発現が増加する蛋白Leucine-rich alpha-2-glycoprotein (LRG)が、加齢によりヒト脳組織で増加し認知機能低下と関連することを発見し、過剰発現モデル動物において、シナプス障害を介して加齢に伴う記憶機能低下を起こすことを報告してきた。本研究では、新たな組織特異的LRG過剰発現マウスを用いた組織・病理学的、行動生理学的解析により、中枢神経系におけるLRG発現と認知機能の関係を明らかにし、LRG制御による加齢性認知機能障害の新規治療法の基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
前年度までに、独自に作製した組織特異的LRG過剰発現遺伝子組み換えマウスにタモキシフェンを腹腔内投与することにより、成熟アストロサイトに特異的なLRGの過剰発現を後天的に誘導することを計画し、タモキシフェン投与量を検討した結果、200 mg/kg×5日間のタモキシフェン投与にて、頭蓋内のLRG発現量は、タモキシフェン非投与群と比較し皮質で6.0倍・海馬で20.3倍となることを確認した。 続いて、LRG発現時期の異なるEarly-LRG群・Mid-LRG群・Late-LRG群を作製すべく、タモキシフェン投与時期をそれぞれ8・24・48週齢とするモデルマウス群を作製した。各週齢で、それぞれ投与後5日で脳検体のサンプリングを行った。その結果、各週齢ともタモキシフェン投与群でリン酸化CREB(cAMP-responsiveelement-bindingprotein)の発現が海馬歯状回に見られた。CREBは、長期記憶の形成に重要な転写因子のひとつで、リン酸化により活性化することが知られている。タモキシフェン投与によりLRG過剰発現した群で、タモキシフェン非投与群よりリン酸化CREBの発現が増加した理由を、今後検証する必要がある。 現在各週齢においてサンプル採取および行動実験を実施中である。採取した検体は病理検体として、電顕による組織の観察や、各種病態特異的蛋白の免疫染色を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初想定していた研究計画より遅れている。理由として、第一に初年度において新型コロナウィルス対策として研究室への出入りに制限があり、その遅れを取り戻すに至っていないこと、第二に同時期に抗体・試薬の海外からの搬送に時間を要したこと、第三に、本研究のみならず当研究室における他の研究にも遅延が生じたため、実験助手のサポートも得にくい状況であったこと、第四にモデルマウスの飼育される施設の移動のため、繁殖が制限されたことが挙げられる。しかしながら、研究計画は明確で遂行可能なものであり、遅れながらも現在研究計画に従って実験が進んでいる。今後も本研究を継続し、研究成果を海外雑誌に論文投稿するまでを完遂するための計画を立て直し研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
脳標本において脳萎縮や脳室拡大を形態学的に評価し、さらに大脳および海馬において病態を反映する免疫組織学的所見を解析する。つまり、リン酸化CREB以外にも、酸化ストレスマーカーとして8-OHdG・4-HNEの発現増加、アストロサイト障害として電子顕微鏡を用いたアストロサイトの減少や形態異常の観察、シナプス障害マーカーとしてSynaptotagminの発現減少を示したい。その他の病態特異的蛋白も適宜追加し解析する。 今後の研究計画にある未完遂の項目として、各モデル群における記憶機能および運動機能を評価するための、Y字迷路試験およびモリス水迷路試験による行動試験である。施行時期は各々タモキシフェン投与完了の16週後とし、加えてLRG暴露期間の違いによる影響を評価するため各群48週齢にて同様の行動実験を施行する。対照は同週齢の非タモキシフェン投与群とする。行動実験終了後に適切な方法で安楽死させ、摘出した脳検体を追実験用の標本作製または蛋白抽出のため適切に保管する。
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