研究課題
若手研究
動脈硬化に関与する自己抗体が存在する可能性を背景に、発現クローニング法により脳梗塞に対する抗体マーカーを同定してきた。新たなマーカーを同定していく中で、動脈硬化を反映するマーカーと脳虚血に特異的なマーカーが存在することがわかった。これらを応用すると、動脈硬化の進行により脳梗塞発症リスクを判定できるだけでなく、血栓症か塞栓症か、脳梗塞の病型を判別できる可能性が見出された。本研究では、脳梗塞病型に応じた新たな抗体マーカーを同定するとともに、既知のマーカーとも組み合わせて脳梗塞マーカーの臨床応用を図る。これにより脳梗塞の発症予測と病型診断が可能となり、日常診療へ貢献できることを確信している。
脳梗塞に関与する抗体マーカーの臨床応用に向けて、当教室で確立した発現クローニングによるスクリーニング手法を用いて、新たな脳梗塞関連マーカーの同定を続ける中で、2つのマーカーについて論文に発表した。TSTD2は、脳梗塞と慢性腎臓病に特異的なマーカーとしてMEDICINE INTERNATIONAL誌に発表した。いずれも動脈硬化を反映する結果として有用なマーカーと考えた。また、colony-stimulating factor 2は脳梗塞と大腸ガンに特異的なマーカーとしてFrontiers in Cardiovascular Medicine誌に発表した。こちらはガンと動脈硬化の両面性があるところが特徴的で、炎症を背景とした自己抗体の形成が示唆され、重要な結果と捉えている。いずれも新規マーカーであり、昨年度より進めている複数の抗体マーカーの統合解析研究の対象とした。2022年度には、これまでに同定した34種類のマーカーに対する抗体価を統合解析することで、マーカー単独でも診断精度が向上することを示し、第22回日本分子脳神経外科学会、日本脳神経外科学会第81回学術集会、および第48回日本脳卒中学会学術集会で発表した。マーカー単独では、脳梗塞発症の独立した予測因子となりうる一方、陽性的中率が高くないという課題があったが、複数のマーカーを統合することで、感度・特異度を維持しながら陽性的中率を向上させられる有用性を示すことができた。今後は機械学習アルゴリズム解析を用いて、より精度を上げたマーカーの組み合わせを検証していく。
3: やや遅れている
新たなマーカーの同定は再度進めることができた。研究代表者の異動によりエフォートに変化があったため、脳梗塞病型診断に関する検体収集が滞ってしまい、予定した解析に至れていない。
脳梗塞関連マーカーを統合して解析することは、有意な結果をもたらすことが示唆されたため、この解析について強化して進めていく。保有する検体と同定した複数のマーカーによりAlphaLISA法による免疫定量を続けることで、有用なマーカーの組み合わせを検証していく。また、病型診断について、多施設前向き研究に着手できるよう検体収集に関しても運用を改め継続していく。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 4件)
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