研究課題/領域番号 |
20K18020
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金 英寛 京都大学, 医生物学研究所, 研究員 (30843338)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 骨代謝 / 数理モデル / 骨粗鬆症 / 薬剤投与シミュレーション / 骨粗鬆症治療 / リモデリング / モデリング / 力学的適応 / シミュレーション / 骨質 / 細胞動態 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、骨粗鬆症治療における骨強度評価の際、従来の骨密度に加え骨質の重要性が認識されている。本研究の目的は、骨代謝・治療数理モデルを構築し、薬剤投与シミュレーションにより骨密度および骨質に対する薬剤効果を明らかにすることである。本数理モデルは、従来評価困難であった骨質を時空間的な細胞動態に基づき評価することを可能とする。本研究は、病態解明や創薬など骨代謝領域において幅広い役割を担い、また、患者ごとに最良な薬剤治療戦略を策定する個別化治療支援技術として臨床応用可能な革新的手法となる。
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研究実績の概要 |
本研究では、細胞動態と、多様な作用機序による薬剤効果を表現した骨代謝・治療数理モデルを構築し、骨代謝疾患に対する薬剤投与シミュレーションにより骨密度・骨質に対する薬剤効果を理解・予測可能な技術を創成することを目的としている。 本年度は、前年度までに構築した骨代謝・治療数理モデルを使用し、骨粗鬆症に対する薬剤投与シミュレーションを試みた。まず、ブタ大腿骨の大腿骨頭内から海綿骨を採取した。その際、荷重部直下を主たる圧縮場と考え、ここから海綿骨を採取した。海綿骨のX線マイクロCT画像を撮像し、再構成することで高解像度のイメージベースト有限要素モデルを構築した。この海綿骨モデルの構造異方性を解析し、構造主軸方向を決定した。この構造主軸方向に圧縮主応力が作用しているものと想定し、構造主軸方向に3軸圧縮を与える有限要素解析の境界条件を設定した。これにより、生体骨のイメージベーストモデルを用いた薬剤投与シミュレーションを行うシステムが構築された。生体骨を用いた薬剤投与シミュレーションを実施するための準備として、大腿骨頭海綿骨モデルに対する骨代謝シミュレーションを行った。その結果、加齢による骨粗鬆症における骨量減少の推移を再現することができた。さらに、この加齢条件に対して、抗RANKL抗体薬投与シミュレーションを実施した。その結果、投薬による骨密度低下の抑制効果、および、投薬中止による骨密度の低下を、再現可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本プロジェクトは、1)細胞動態に立脚した骨代謝モデルの構築、2)薬剤作用機序に立脚した骨代謝・治療モデルへの拡張、3)薬剤投与シミュレーションの実施、の各課題を各年において進める計画である。これまで、1)、2)を達成できており、現在3)を遂行中である。2022年度は、海綿骨のイメージベーストモデルを組み込んだシステムを構築し、生体骨を用いた薬剤投与シミュレーションを実施している。マイクロCT画像から再構成した海綿骨モデルが高解像度であるため大規模計算を必要とするが、この計算コストが想定よりも大きく、やや遅れている状況である。そのため補助事業期間を延長した。本研究計画の内容自体は、計画通りに遂行できており、このまま計画通りに進めることで、2023年度に3)を達成可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、構築した骨代謝・治療数理モデルを用いて、代表的な骨粗鬆症治療薬の投与シミュレーションを行い、細胞動態に基づいた骨質解析を行う。解析対象は構築した生体骨海綿骨モデルを用いる。細胞動態として、破骨・骨芽細胞面の面積比率を解析する。この細胞動態に基づき、骨質を規定する重要な因子である、海綿骨の微細構造(骨体積分率、骨梁幅)と構造異方性を解析する。骨粗鬆症状態とそれに対する治療効果を比較することにより、骨量・骨質に対する薬剤効果を細胞動態に基づき理解することを目指す。
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