研究課題/領域番号 |
20K18036
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
亀田 拓哉 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (50864005)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | tendinopathy / TRP / inflammation / tendon / TRPA1 |
研究開始時の研究の概要 |
ばね指、テニス肘、アキレス腱炎などの腱障害において、薬物治療の効果は限定的で、特にステロイド注射は長期的には悪影響を与えることもある。Transient Receptor Potential チャネル(TRPチャネル)は、腰痛に深く関わる事が判明しており、同様の慢性化炎症の機序を持つ腱障害において、TRPチャネルが関与している可能性は高い。 本研究では培養細胞・腱組織を用いて腱障害に関わりの深いTRPチャネルを同定し、この経路による慢性炎症の改善・増悪効果を検討する。本研究により、腱障害におけるTRPsの関与と慢性炎症のメカニズムの一部が明らかとなり、新たな薬物治療法の可能性を提示できる。
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研究実績の概要 |
弾発指、上腕骨外側上顆炎、肩関節腱板炎、アキレス腱炎などの腱障害は日常診療で頻繁に遭遇するが、根本的な薬物治療はない。Transient Receptor Potential チャネル(以下TRPs)は様々な環境に反応し、細胞内Ca濃度を上昇させることで、下流にある細胞応答を引き起こす役割を持つ。本研究では腱障害においてTRPチャネルがどのように慢性炎症に関与しているのかを解明する。 R2年度では、ヒト腱細胞を購入し、培養が可能であることを確認できた。R3年度では、実験計画の実験Ⅰに相当する手順として、培養した腱細胞にサイトカインを暴露させ、その細胞群からRNA抽出を行い、リアルタイムPCR法を行うことで、標的遺伝子であったTRPs、特にTRPA1の発現が有意に高いことが明らかとなった。更に、TRPA1を作動させる物質を炎症性サイトカインと組み合わせて添加した細胞群からRNA抽出を行い、リアルタイムPCR法を行うことで、細胞外基質の就職遺伝子が変化する事をとらえたため、TRPA1の作動が、炎症によって引き起こされる細胞外基質の変化を修飾する事が示唆された。また、手術の破棄検体からヒト腱細胞を分離、培養する手順について、一般倫理委員会に承認を得た上で、実際に分離培養が可能となり、5検体を収集した。 R4年度では、さらに検体数を増やし、7検体を収集できた。炎症下におけるヒト腱細胞を免疫染色し、TRPA1タンパク発現が増強していることを確認した。さらにTRPA1を作動させる物質を炎症性サイトカインと組み合わせる実験系で、ELISA法により、培養液中の細胞外基質を変化させるタンパクが変動する事をとらえた。また、ヒト腱細胞におけるCaイオン流入が、炎症環境下においてのみ、TRPA1作動物質により引き起こされることをとらえられた。以降の動物実験のための倫理委員会の申請を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R2年度は研究責任者の異動直後であったこともあり、医療臨床業務との兼務でエフォートを予想する事が困難であった。しかし、R3年度以降では、所属機関の協力の元、業務の調整を行い、エフォートを予定した割合に近づける事ができた結果、全体としてプロジェクトが進行した。 具体的には、培養実験系、RNA抽出、PCRなど、実際の実験を計画、実施する時間が相対的に増えた。また、一般倫理委員会から承諾を得られたのち、臨床検体が比較的よいペースで収集できた点もあった。 ただし、PCR機器の不調などもあり、最も理想的な進行状況には至っていないと判断した。また、研究発表は予定より遅延したものの行うことができ、論文掲載も予定より遅延しているが、現在作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実験計画の実験Ⅱに相当する手順の通り、ラットアキレス腱炎モデルを作成し、行動学的検討、リアルタイムqPCRや免疫組織学評価を行うことで、腱の慢性炎症における行動学的な変化や組織学的な変化を評価する。また、TRPA1を作動させる物質や機能させない物質を投与することで、行動学的・組織学的にどのように変化するかを評価する。これにより、これまでの実験で判明した炎症によるTRPA1の発現変化、機能的変化や、TRPA1の作動による変化が、組織、動物レベルで腱障害モデルにどのような変化を与えるかを評価することができる。さらに、実験Ⅲに相当する内容として、テニス肘など、腱障害の検体を採取し、これの遺伝子発現量評価を行い、実際のヒトの腱障害におけるTRPや細胞外基質関連遺伝子の発現変化を捉える。 以上の結果を踏まえ、段階的に国内・国際学会発表、論文作成を行う。
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