研究課題
若手研究
変形性関節症(OA)は本邦で推定2530万人の患者がおり生活の質を低下させる。OAでは関節液のヒアルロン酸(HA)が断片化し、病態形成に重要な役割をもつと推測される。近年、難聴の原因遺伝子であるKIAA1199に強いHA分解活性が報告され、OAの滑膜細胞に高発現するためOAのHA分解への関与が推測されている。我々はこれまでラットの軟骨肉腫細胞を用いてKIAA1199の機能を阻害する薬剤(Drug X)を同定した。本研究ではOAの動物モデルへのDrug Xの治療効果を検討し、臨床応用に向けた基盤データを得ることを目的とする。本研究はOAの進展の病態を改善する薬剤開発を目指した世界初の試みである。
変形性膝関節症(OA)は本邦で2530万人が罹患していると推定されており、ADL、QOLを著しく低下させるが、未だ病態を改善する内服薬開発は成功していない。OA患者では細胞外マトリックス(ECM)が変性し、関節液中ヒアルロン酸(HA)は低分子量化し、HAが病態形成に重要な役割を果たすと推測されている。近年、難聴の原因遺伝子として発見されたKIAA1199は既知のHA分解酵素より強力な活性があり、OAの滑膜線維芽細胞に高発現しているため、OAにおけるHA分解にKIAA1199の関与が推測されている。本研究の目的は、OAにおけるヒアルロン酸分解の関与が推測されているKIAA1199を抑制するDrugXを、OAの動物モデルに投与し、治療効果を検討し、臨床応用に向けた基盤データを得ることである。研究実績として、令和4年度も引き続きin vivo実験を中心に進めた。DMMモデルマウスにDrugXを投与し、手術側および、sham群の関節症性変化をMankin score などを用いて組織学的に定量、評価した。また、組織の軟骨、ヒアルロン酸、KIAA1199を免疫染色で評価した。関節組織のRT-PCR、ヒアルロン酸の分子量を測定した。Drug投与群では関節症性変化が軽減される可能性が示唆される結果を得た。また、軟骨組織のexplant cultureによるex vivo研究を現在実施しており、炎症性サイトカイン刺激下の軟骨組織へのDrugの効果を検討中である。
2: おおむね順調に進展している
R2年度はOAマウスモデルの安定的な作製までにとどまったが、R3,4年度はドラッグの投与、関節の組織学的評価、免疫染色、PCR、ヒアルロン酸の分子量といった様々な実験を実施し、データを得ることができ、概ね予定通り進行していると考えられる。実験自体のデータはおおむねそろっており、今後は論文化を検討している。また、COVID19パンデミックによる、ピペットなど消耗品やPCR試薬の欠品や納入遅延も問題となり、やや遅れていると判断した。また研究代表者は、診療従事者として、COVID対策に伴う臨床業務負担の増加に対応している。
今年度においては、現在の研究結果のまとめ、論文発表をすすめることを検討している。研究環境として、技官および研究助手の勤務制限、テレワーク解除を期待する。
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すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 1件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 15件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 4件)
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