研究課題/領域番号 |
20K18061
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
寺部 健哉 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10816870)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 変形性関節症 / metabolic reprogramming / 嫌気性解糖 / 2-Deoxy-D-glucose / ミトコンドリア / ガラクトース / 軟骨代謝 / 代謝リプログラミング |
研究開始時の研究の概要 |
変形性膝関節症(OA)に対する有効な進行抑制薬は未だ存在しない。これまでの研究からOA軟骨細胞では正常細胞と比較して嫌気的解糖系の代謝(glycolysis)が亢進する代謝リプログラミングが発生し、これにより炎症が惹起されていることが明らかとなった。我々はglycolysis阻害剤である2-Deoxy-D-glucoseとガラクトースが炎症下の軟骨細胞に保護作用があることを発見した。本研究ではin vitroでの新たなOA細胞モデルを使用しglycolysisの更なる機能解析をすすめ、in vivoでglycolysis阻害剤の有効性と網羅的な代謝変動を検討することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
本研究では、軟骨細胞変性における細胞内代謝変動の意義とその代謝経路の機能解析を行った。変性における細胞内代謝変動の制御を介した軟骨保護作用を有する新規治療薬の開発を目指している。 これまでに我々はglycolysis阻害剤として2-deoxyglucose(2-DG)とガラクトースを用いて軟骨細胞における炎症下の解糖系の細胞内代謝変動(嫌気性代謝の亢進)の制御が軟骨保護作用を有することを明らかにした。他の細胞内代謝の変動の検討のためメタボローム解析を用いて、glycolysis阻害剤の細胞内代謝変動への影響を網羅的に検討した。IL-1β刺激によりTCA回路、アミノ酸分解、ペントース経路が亢進したが、2DGはいずれもこの亢進を抑制した。以上より解糖系以外にも複数の細胞内代謝の変動が発生し、glycolysis阻害剤は解糖系以外の代謝も制御していることを明らかにした。次にglycolysis阻害剤は炎症による軟骨細胞のエネルギー代謝のkey regulatorであるAMP activated protein kinase (AMPK)の活性化の低下を回復させるため、AMPKのアゴニストである5-Aminoimidazole-4-Carboxamide Riboside(AICAR)を用いて検討した。AICARはIL-1β刺激によるAMPK活性化の低下を抑制した上で、軟骨保護作用を認めた。次にin vivo研究として変形性関節症(OA)モデルである関節不安定化(DMM)モデルマウスを用いて、2DG、ガラクトース、AICARの各々を関節内注射し、その有用性を検討した。組織学的検討として2DG、ガラクトース、AICARのいずれもサフラニンO染色性低下を抑制しておりOARSI scoreはcontrol群より有意に低値でありin vivoにおいても軟骨保護作用を有することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにin vitro、in vivoともに概ね予定通りに進んでいる。 In vitroではメタボローム解析より2DGはglycolysis阻害剤であるものの炎症による複数の細胞内代謝変動を制御しているという知見が得られた。牛関節軟骨を数回継代し、脱分化させると軟骨細胞の表現型を喪失する。このモデルにおける細胞内代謝変動について細胞外フルックスアナライザーを用いて検討しているが、安定したデータが現在まで得られていない。条件設定を見直して再検討する。 in vivo研究ではDMMモデルを使用し、2DG、ガラクトース、AICRを関節内注射による効果を検討し、いずれも軟骨保護作用の傾向を認めた。一方で、今回のDMMモデルの検討は6週間で評価としたが、関節破壊の程度は軽微であったため今後は長期(8~12週)モデルにおける効果について検討する。さらに組織の免疫染色(MMP13、AMPK)が未施行であり、今後検討する。分子生物学的検討として、マウスの後肢から軟骨細胞を単離し、細胞外フルックスアナライザーによりglycolysis評価を予定しているが、現在まで軟骨細胞の単離培養が安定しておらず現在条件設定を見直して再検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
in vitro研究では脱分化モデルを用いた検討を引き続き行う。とくに脱分化モデルにおいて2DG、ガラクトース、AICRが代謝変動の制御により軟骨細胞の脱分化を抑制できるかに注目して検討する。 これまでにOAモデルとしてDMMマウスを用いて検討し、2DG、ガラクトース、AICRの関節注射が軟骨保護作用を有する傾向を認めたが、上記のように本年度はDMM作成後長期(8~12週)での検討を行う。組織の免疫染色(MMP13、AMPK)に加えて、分子生物学的検討である軟骨細胞を単離後の細胞内代謝変動について検討する。 今後はこれまでの結果と上記の検討を行い、データ解析した後に本年度中に論文作成を行い、研究成果を発表する。
|