研究課題
若手研究
卵巣顆粒膜細胞種(aGCT)を含む希少卵巣腫瘍は臨床試験を行う事が困難であり、旧来の不十分なエビデンスや他の卵巣悪性腫瘍に対する治療法に頼らざるを得ない状況である。また、検体収集が困難である事からその性質についての基礎的解明も進みにくい。しかし新技術を用いた基礎的な解析を基に新規治療を開発し、予後の改善を図る事は必須である。本研究では、aGCTの発生機序の解明と有効な治療法の確立を目的とし、臨床検体を用いた遺伝子の網羅的解析を行う。
成人発型顆粒膜細胞腫(aGCT)患者64人のうち、46人はaGCT特異的FOXL2変異を有し、残りの18人はFOXL2 wtであった。病理学的に非aGCTと診断された3人を除く61人の患者のうち、10人は予後との相関が報告されているTERTプロモーター変異を有していた。61例中6例に計8回の再発が認められ(PFS中央値149ヵ月)、初発例と再発例で変異の状態に変化はなかった。FOXL2遺伝子変異は予後を悪化させる傾向が認められたが、TERプロモーター変異と予後との相関は認められなかった。
aGCTは希少癌であり、再発までの期間が長い事を特徴とする。また、初発のみならず再発においても手術以外の有効な治療法がなく、新規の治療法の確立が望まれる。しかし、希少癌は症例の蓄積が困難であり臨床試験を行う事も困難であるため、限られた知見の中で腫瘍の性質を明らかにする事が重要である。このような状況において、aGCT特異的なFOXL2変異やTER promoterの変異が予後に相関するという報告は、機能解析や新規バイオマーカー同定の足がかりとなるものであり、本研究においてこれを日本人コホートで検証する事は日本におけるaGCT研究を進める上で重要である。
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