研究課題
若手研究
PCOSはその多彩な症状のため、病因の詳細は不明であるため対症療法が主であり、根本的な治療法の開発には至っていない。近年、糖質・脂質代謝調節などの疾患おいて臓器連関の関与が着目されており、多臓器で代謝異常や内分泌異常を呈するPCOSでは、このような臓器間のネットワークがその病態において重要な役割をもつ可能性が高い。本研究では、生殖生理・内分泌を制御する視床下部-下垂体-卵巣軸に加え、肝臓、筋肉、骨、消化管など、これらをとりまく複数の臓器から分泌される因子に着目した解析により、新規治療につながるようなPCOSの病態解明をめざす。
動物モデルや既存データの解析によりPCOSにおいて臓器間で関連する因子の抽出を行った。モデルの解析により肝臓で遺伝子発現変動のみられたヘパトカインとしてRBP4を検出、血清濃度の上昇を確認した。卵子の解析ではリボソーム関連のパスウェイの活性化が示された。RBP4とリボソーム活性化の関連は既報でも示されている。着床の場である子宮内膜についての既存データ解析ではIGF-1の発現低下やTNF-aパスウエイの活性化が認められた。TNF-aパスウェイはIGF-1で抑制、RBP4で活性化される。PCOSにおいてアンドロゲンの作用や肝臓からのRBP4分泌の上昇が代謝障害や不妊に寄与する可能性が示唆された。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)は、排卵障害による不妊症に加え、糖質・脂質代謝異常や、子宮体がん、妊娠時中の周産期合併症の増加にも関与する。女性の 10% 程度に認められるありふれた疾患であるにもかかわらず、病態の詳細は不明であり、現在は対症療法のみで根本的な治療法はない。近年 2 型糖尿病や脂質代謝異常などの疾患において、臓器連関(臓器間のネットワーク)の重要性が多数報告されている。本研究では、PCOSを全身性の疾患ととらえて多臓器の解析を行うことで、PCOSにおいても臓器間のネットワークがその病態に関与することを示唆、PCOSの病態の理解を深め、抜本的な治療法開発に寄与する可能性がある。
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