研究課題/領域番号 |
20K18361
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分56060:眼科学関連
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研究機関 | 東邦大学 (2021-2023) 東京女子医科大学 (2020) |
研究代表者 |
須藤 則広 東邦大学, 医学部, 助教 (80646216)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 網膜発生 / 転写制御 / ミュラー細胞 / p27 / 網膜 / 網膜発生・再生 / p27 |
研究開始時の研究の概要 |
p27は細胞周期のブレーキ役であり、細胞の増殖を抑えていることは容易に想像できるが、成体ミュラー細胞においてCDKインヒビターとしてサイクリン-CDKを抑制しているのか、転写因子として遺伝子を抑制しているのか明らかではない。本研究はp27が成体ミュラー細胞でのコリプレッサーとしての機能を明らかにすることで、幹細胞としての性質に影響を与えている可能性を示すものであり、再生できない原因に繋がる点で大変興味深い。またp27cKOマウスを用いて成体網膜ミュラー細胞におけるp27の転写調節の機能を初めてin vivoレベルで明らかにする試みでもある。
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研究実績の概要 |
p27Kip1/cdkn1b(以下、p27)遺伝子は、細胞周期制御因子として細胞が細胞周期から離脱することを制御している。しかし近年は細胞周期制御因子としての機能以外に転写制御因子としての可能性についても注目が集まっている。本研究では網膜のグリアであるミュラー細胞のp27遺伝子の機能について解析を行っている。p27遺伝子が発生期の網膜前駆細胞で発現すると増殖が停止し、その後神経へと分化が進む。その後成熟した網膜の神経細胞ではp27遺伝子の発現が減少するが、ミュラー細胞では強く維持されている。現在までにその機能は明らかではなく本研究では転写制御因子としての可能性を追求している。 本年度は前年から進めていたミュラー細胞を用いたp27遺伝子のクロマチン免疫沈降シークエンス解析(ChIP-seq解析)を主体的に行った。この解析は転写調節因子などがゲノム中に結合していることを確認する解析である。2種類のp27タンパク質に対する抗体を用いてChIP-seq解析を行った結果、いずれもゲノム中におけるp27タンパク質の結合を示すピークが多数得られ、p27遺伝子が転写調節に関わる可能性が示唆された。さらに得られたピークのゲノム配列を用いたモチーフ解析では複数の転写調節因子の結合配列が得られ、特に共通して見られたものがジンクフィンガー型の転写調節因子であった。従ってp27遺伝子が他の転写調節因子と共役する形でゲノム中に結合している可能性を示すものであるといえる。次に2種類の抗体のChIP-seq解析から得られた転写調節因子をクローニングし、p27タンパク質との結合を確認するGST-pulldown解析を現在進めて解析を行っている。 ミュラー細胞には網膜の神経細胞の維持に重要な役割を担うことが知られており、今後の解析によりp27遺伝子のミュラー細胞での役割を明確にできるものと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの進行状況はやや遅れている段階であるが、おおむね順調な成果が得られていると考えている。解析を進めていく中でミュラー細胞を用いたp27遺伝子のクロマチン免疫沈降シークエンス解析の進行に時間を要したが、結合を示すピークが得られたことで本研究の成果を大きく前進させたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ChIP-seq解析で得られたp27タンパク質と共役候補因子との結合解析を進めてゆくが、各因子が本当にミュラー細胞で発現しているのかなど、確認すべきことも多く今後の進行に予測が難しい点もある。発現が明確なものなど優先順位を付けて進めてゆく。GST-Pull Down解析はin vitroでの結合解析なので、ミュラー細胞を用いた共免疫沈降法などでin vivoでの結合も確認したいと考えている。またp27タンパク質はDNA結合ドメインをもたない為に直接DNAに結合しないと考えているが、結合しているとする報告もあるためDNAとの結合性についても確認する必要があると考えている。今後p27が転写制御に関わる可能性についてレポーター解析を行う必要があり、ミュラー細胞の初代培養系を用いて行う予定であるが、DNAコンストラクトの導入効率が低いため、複数の導入試薬の検討を試みるが、解決しない場合は他の細胞を用いる予定である。
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