研究課題/領域番号 |
20K18719
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
外内 えり奈 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 特任助教 (50826831)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 口腔がん / microRNA / 遺伝子解析 / EGFR |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、内在性ノンコーディングRNAであるmicroRNA(miRNA)に着目し、複数の標的遺伝子を抑制する機能により、口腔がんの重要な経路を複合的に制御可能となるかについて検討を行う。その中でmiR-3140は、MYC等がん遺伝子の転写を亢進する機能を持つBRD4や、がん細胞増殖シグナルを伝達するEGFRを標的遺伝子とすることで、がん細胞増殖抑制能を示す。口腔がんにおけるBRD4、EGFR発現状態とmiR-3140の口腔がんへの適応を評価し、miR-3140の口腔がんへの応用性を評価することにより、新たな治療戦略開発への一歩となることを目指す。
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研究実績の概要 |
microRNA(miRNA)は、それ自身はタンパク質をコードしていない、短いノンコーディングRNAであり、1つのmiRNAは複数の遺伝子を多面的に抑制する機能を有する。これまでの研究でmiR-3140は、がん細胞増殖を亢進させるがん遺伝子BRD4やEGFR、CDK2を抑制する機能を有することを報告した。口腔がんにおいては、EGFRをターゲットとするキメラ抗体が臨床で適用されており、一定の延命効果を示している。実際に口腔がん臨床検体においては、7.7% がEGFRの増幅を有すとされている。そこで、口腔がん細胞株の遺伝的背景を評価し、EGFRの増幅の有無でmiR-3140の抗腫瘍効果の差の有無を評価することとした。口腔がん細胞株から抽出したRNAでシークエンス解析を行い、EGFR増幅の有無で細胞株を大別した。その中で、EGFR増幅を有しEGFRタンパク質発現も高い細胞株としてHSC2、EGFR増幅なくタンパク質発現も低い細胞株としてHOC313を使用することとした。miR-3140をそれぞれの細胞株に導入すると、どちらとも著明な腫瘍細胞増殖抑制効果を示した。EGFRの増幅の有無に限らず、miR-3140のがん細胞増殖抑制効果が見られたことから、EGFR経路だけではなく、口腔がんにおける他の重要な経路も複合的に抑制することでがん細胞増殖抑制効果を示すことが推察された。口腔がん細胞株でmiR-3140を導入した際の変化を解析することで、miR-3140を用いた核酸医薬が治療戦略となり得るか検討をしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞培養実験、miR-3140導入による細胞増殖抑制の評価、RNAやDNA、タンパク質を抽出し、下流の遺伝子の発現変化の検討を行っている。また、miR-3140は細胞周期に関与するCDK2を直接的に制御することから、他にも細胞周期停止もしくは細胞死を誘導するマーカーを評価し、細胞増殖抑制の詳細を検討する。 これまでに、口腔がん細胞株から抽出したRNAでシークエンス解析を行い、EGFR増幅の有無で細胞株を大別した。その中で、EGFR増幅を有しEGFRタンパク質発現も高い細胞株としてHSC2、EGFR増幅なくタンパク質発現も低い細胞株としてHOC313を使用することとし、口腔がんで抑制しうる重要な経路を探索する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、より重要な遺伝子を複合的に抑制できるmiRNAを応用することを目的としている。これまでの研究で、miR-3140はBET familyであるBRD4, BRD3や既知の口腔がん治療薬のターゲットであるEGFR, 細胞周期の亢進に関与するCDK2を直接のターゲットとして抑制することを示してきた。BRD4, BRD3は、MYC等がん遺伝子の転写を促進させることによりがん細胞増殖に寄与する遺伝子である。最近の報告では、他のがん種と同様に、頭頸部がんにおいてもBRD4が治療標的になり得るかを検討し、in vitro / in vivoでBET阻害薬の効果があるとの報告が相次いている。miR-3140はBRD4を直接的に抑制することが可能であり、BRD4の経路の遮断が口腔がん細胞株の細胞増殖抑制に寄与していることが推察され、口腔がんの治療戦略として有用である可能性が高い。miR-3140導入口腔がん細胞株をRNA、DNA、タンパクレベルで解析し、BRD4経路やEGFR経路の遺伝子やタンパクの発現への影響を評価する。また、CDK2も細胞周期亢進に関与する重要な遺伝子であり、これを標的にがん細胞増殖抑制に寄与することは、がん種を超えて幅広く制御する可能性を有しているため、その他の細胞周期マーカーの発現についても評価し、その動態を明らかにする。 頭頸部に発生する腫瘍に対し、遺伝子解析を行うことにより、SNP変異等で腫瘍発生に大きく関与する遺伝子を検討して解析を進めていく。
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