研究課題/領域番号 |
20K18720
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分57060:外科系歯学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山口 聡 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70778670)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 歯髄幹細胞 / 組織再生 / 半導体レーザー / 皮弁再建 |
研究開始時の研究の概要 |
口腔癌の手術には遊離皮弁による再建をともなうことが多い。再建手術の成功率は向上したが血流不全や虚血再灌流障害による皮弁の部分壊死や創の離開といったトラブルを生じることがある。そのためリハビリテーション開始が遅れ、治療が長期化するなど、QOLに関わる問題となることもある。申請者はこれまでの 研究で歯髄幹細胞が放出する因子群が抗炎症・細胞死抑制・線維化抑制・血管新生などの多面的な作用を有し、組織再生・修復を促進すること、半導体レーザーが血管拡張と免疫細胞遊走により組織修復を促進させうることを見出した。本研究では、これらを組み合わせ再建手術後の治癒をより早期に、確実に達成する方法の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
歯髄幹細胞由来因子が皮弁の生着に与える効果について、動物モデルおよび培養細胞系で検証した。マウスの背部に皮弁を挙上し栄養動脈をクランプ・解除することで虚血再灌流モデルを作製した。歯髄幹細胞培養上清を経静脈的に投与し、皮弁の壊死領域を評価した。コントロール群と比較し歯髄幹細胞培養上清投与群では壊死領域が有意に縮小し、組織学的には細胞のアポトーシスが減少していることが明らかになった。また再灌流後の皮弁の血流をレーザースペックルイメージングで比較すると歯髄幹細胞培養上清投与群では皮弁の血流が有意に多いことが明らかとなった。ヒト皮膚ケラチノサイトを使用した培養細胞系では、低酸素培養により細胞のアポトーシスを誘導し、歯髄幹細胞培養上清投与の効果を検討した。コントロール群と比較して歯髄幹細胞培養上清投与群ではアポトーシスが有意に減少した。また、歯髄幹細胞培養上清はヒト皮膚ケラチノサイトの増殖を促進した。以上の結果より、歯髄幹細胞由来因子が皮弁の生着をより早期に確実に達成する効果を持つことが期待できると考えられた。歯髄幹細胞培養上清中の効果因子の同定を目指してアッセイを行い、複数の因子に絞り込むことができた。今後は半導体レーザー照射の効果についての検討を加えていく。本研究により歯髄幹細胞の効果が明らかとなれば、皮弁生着を改善させるという目的に使用できるだけでなく、組織の再生・修復過程にあるあらゆる病態において応用でき、さまざまな創傷治癒、再生医療における普遍的な治療法を提供できる可能性がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
歯髄幹細胞由来因子が皮弁の生着に与える効果について、動物モデルおよび培養細胞系で検証した。マウスの背部に皮弁を挙上し栄養動脈をクランプ・解除することで虚血再灌流モデルを作製した。歯髄幹細胞培養上清を経静脈的に投与し、皮弁の壊死領域を評価した。コントロール群と比較し歯髄幹細胞培養上清投与群では壊死領域が有意に縮小し、組織学的には細胞のアポトーシスが減少していることが明らかになった。また再灌流後の皮弁の血流をレーザースペックルイメー ジングで比較すると歯髄幹細胞培養上清投与群では皮弁の血流が有意に多いことが明らかとなった。ヒト皮膚ケラチノサイトを使用した培養細胞系では、低酸素培養により細胞のアポトーシスを誘導し、歯髄幹細胞培養上清投与の効果を検討した。コントロール群と比較して歯髄幹細胞培養上清投与群ではアポトーシスが有意に減少した。また、歯髄幹細胞培養上清はヒト皮膚ケラチノサイトの増殖を促進した。これらに加え半導体レーザー照射の効果について検討中であるが、遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
マウス背部皮弁虚血再灌流モデルおよびヒト皮膚ケラチノサイト培養系で歯髄幹細胞由来因子が血管新生、炎症性サイトカイン発現に与える影響を評価し、治療のメカニズムを検証する。また、半導体レーザー照射の効果についての検討を加えていく。歯髄幹細胞培養上清中の効果因子の同定の作業を引き続きすすめていく。
|