研究課題
若手研究
関節リウマチ(RA)による炎症と骨破壊は依然既存薬では制御が困難な場合があり、新たな治療戦略の開発が要求されている。NLRP3インフラマソームは組織破壊や感染に対してIL-1βやIL-18を分泌する生体防御機構であるが、近年RAの進展や難治性にインフラマソームの過剰な形成の関与が示唆されている。しかし、その実態は依然不明なままである。本研究では、RAにおけるNLRP3インフラマソームを起点とした炎症および骨破壊の進展の機序を、TAK1に着目して解析を行うことで明らかにし、TAK1の活性(リン酸化)を標的とした炎症と骨破壊を同時に制御する新規治療法を開発することを目的とする。
NLRP3インフラマソームは、炎症性サイトカインであるIL-1βの産生に関わり、その恒常的な活性化が炎症性疾患の進展に関与していることが近年明らかとなってきている。しかし、関節リウマチにおいてはその関与について不明な点が多い。今回の研究によって、関節リウマチモデルマウスにおいてインフラマソームが活性化していることが明らかとなった。さらに、セリンスレオニンキナーゼであるTAK1の活性を抑制する試薬を投与した結果、インフラマソームの活性化が阻害され関節破壊が顕著に抑制された。これらの結果より、TAK1阻害剤はインフラマソーム活性をターゲットとした新たな治療戦略となり得ることが示唆された。
近年、関節リウマチでは治療法の発展に伴い重度の関節破壊を抑制することが可能となってきているものの、既存薬が奏効しないケースもあり、未知の関節破壊誘導機序の存在が示唆されている。また、一度関節破壊が生じると運動障害によるQoLの低下を引き起こすため、病態の解明と新規治療戦略の開発は喫緊の課題と言える。今回の研究によって病態におけるインフラマソームの関与が明らかとなったことは、RAの発症・進展機序を明らかにしていく上で学術的意義が大きい。また、制御が困難であったインフラマソームをTAK1阻害剤が抑制することを見出したことは、今後の創薬にも繋がり得る研究成果であり社会的意義も大きい。
すべて 2022 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Haematologica
巻: 107 号: 3 ページ: 744-749
10.3324/haematol.2021.278295
Clinical & Translational Immunology
巻: 11 号: 1
10.1002/cti2.1371
巻: 106 号: 4 ページ: 1172-1177
10.3324/haematol.2019.244418
Cancers (Basel)
巻: 12 号: 4 ページ: 929-929
10.3390/cancers12040929
120006894611