研究課題
若手研究
本研究は, 大規模災害時に生じる身元確認作業において必要とされる遺体の歯科所見採得の際に, エックス線を必要としない非破壊装置(超音波, 近赤外線)を用いて, 補綴物および 修復物の材質を判定し, 体内に埋入されているインプラント体などを検出する装置を開発するための基礎的検討を行うものである. さらに, 人工知能(AI)を用いて, 超音波および近赤 外線装置から得られたデータから材質を特定するまでのプロセスを自動化するアルゴリズムを構築する.
本研究の概要は,歯冠色材料を非破壊的な計測手技を用いて特定することによって,歯科的個人識別へ応用することである.現在までのところ,研究が完了しているのは,歯冠色材料(セラミック,ジルコニア,レジンブロック)および歯質の超音波計測であり,これらは各学会で発表済みである.さらに,歯列のデジタルデータ化を実現するために,口腔内スキャナを用いた歯列の3Dデータ構築の一手法として,バーチャル模型を作成し,個人識別のための遠隔実習システムの検討,と題し第89回日本法医学会学術関東地方集会で発表した.その後,歯冠色材料の赤外線データによる判別方法の一手技として,近赤外線装置であるOCTを用いて歯質および歯冠色材料の信号強度分布を採取した.その結果,エナメル質表面およびセラミックの信号強度分布は類似していることがわかった.このことは歯面研磨ペーストによる機械的歯面清掃を施した歯質表面のデータから導き出されたものである.すなわち,光線透過性と歯質の滑沢度は相関関係にあり,歯冠色材料であるセラミック表面の光線透過性は,エナメル質と同等であり,信号強度分布による識別は困難であるが,例えば陶材焼付金属冠のような金属フレームを有する場合は,パラジウムの存在によって識別は容易である.また,ジルコニアとCAD/CAMブロックもまた特有の信号強度分布を有するため,識別は容易であることがわかった.AIを用いた検出方法としては,超音波計測で得られた波形を教師データとし,プログラミングはPythonを用い,アルゴリズムはYOLO v2を用いた.その結果,セラミック,ジルコニア,CAD/CAMブロックのインゴットを計測した波形の識別は97%で可能であった.
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Journal of Oral Science
巻: 63 号: 2 ページ: 133-138
10.2334/josnusd.20-0420
130008009593