研究課題/領域番号 |
20K18902
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) (2023) 名城大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
近藤 梨沙 (井田梨沙) 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, リサーチレジデント (00809436)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | リチウム / 元素汚染 / 健康リスク評価 / がん |
研究開始時の研究の概要 |
全世界人口の10分の1近くが安全な飲用水を入手することが困難な環境にあり、開発途上国における安全な飲用水の確保は、SDGs(持続可能な開発目標)のひとつに取り上げられる。ヒ素が含まれた飲用水の摂取により疾患、特に癌の発症リスクが上がることはすでに明らかとなっているが、他元素による健康リスクに関する情報はほとんどなく、確実な浄化技術も見出されていない。本研究では、培養細胞を用いた発癌リスク評価系を確立し、単独元素及び複合元素曝露による発癌毒性をより効果的かつ効率的に検証することを目指す。
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研究実績の概要 |
【背景】開発途上国における安全な飲用水の確保は、SDGs(持続可能な開発目標)のひとつに取り上げられる非常に重要な問題である。世界で約6憶6300万人が基本的な飲み水の入手ができない状況にあり、そのうち河川や湖などから汲んだ未処理水を直接口にしている人口は1憶5000万人にのぼる。未処理水中に含まれる有害物質のうち、煮沸浄化が可能な有機汚染物と異なり、元素は除去が困難であることから、汚染元素の特定及び浄化技術の開発が課題となっている。
【方法】アフガニスタンの首都カブールにて採取した飲用水227検体についてICP-MSによる元素分析をおこない、高濃度元素を特定した。その後、リチウムが発癌毒性に関与するかどうかを検証するために、正常培養細胞株および腫瘍培養細胞株に対するリチウムの腫瘍促進効果について検証をおこなった。さらに、阻害剤による効果を明らかにするため、リチウムが関与する細胞内シグナル経路の探索を進めた。
【結果】元素分析の結果、アフガニスタンの飲用井戸水中に含まれるリチウム量は、これまでに報告されている他国での飲用水中含有量と比較して、平均値では20倍、最大値では2.6から260倍も多いことが明らかになった。正常細胞を用いたin vitro解析では、がん細胞の特性を示す足場非依存的な増殖能が塩化リチウムにより促進することが示された。腫瘍細胞株ではみとめられなかったことから、リチウムが発癌に関与する可能性が示唆された。塩化リチウム添加後の細胞中では、生存・増殖に関与するシグナルが活性化しており、これらの阻害剤を塩化リチウムと共に細胞に添加すると、塩化リチウムによる足場非依存的増殖能が抑えられることを明らかにした。最終年度には、リチウムが関与する他のシグナル経路探索を試みたが解明には至っておらず、今後さらなる探求が必要となる。
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