研究課題
若手研究
Escherichia albertiiに共通する特徴に乏しいために本菌の同定は難しく、原因菌不明とされた本菌による感染事例は多い。1つの菌種を類似した特徴を持つ集団に細分類するには、進化系統に基づく集団(PG)を定めることが有効である。本研究では、我が国における「E. albertii感染症の検出能を向上」させるために、E. albertiiのPG分類法を確立した後、各PGに共通する生化学性状及び病原因子を明らかにして同定法を確立する。さらに、「E. albertiiのヒトへの感染経路を推定」するため、感染者、動物及び環境にどの様なPGが分布しているかを調査する。
令和4年度は、大腸菌で実用化されている幾つかの遺伝子型別(①~④)を用いてEscherichia albertiiを解析し、令和5年度も引き続き、その結果に基づいたGroupingを進めている。①Multilocus sequence typingの解析対象となるHouse keeping遺伝子の塩基配列が、大腸菌とE. albertiiで大きく異なっており、各遺伝子をコードに変換できなかった。そこで、菌株間での塩基配列比較により一塩基多型を抽出した後、系統樹を作成することで対応した。②指標遺伝子を利用した系統分類、及び③病原因子遺伝子の保有状況に基づく型別については、解析対象の遺伝子の大部分が大腸菌と相同性が低かったため、PCR法プライマーの再設計及び反応条件の変更を行った。④O-genotypingについては、供試菌株の半数以上が何らかのO血清型に型別された。PCR法を用いたリポ多糖コア領域の型別も試みたが、解析系が上手く機能せずに断念した。一方で、遺伝子型別によるGroupingと並行して生化学性状試験を実施している。今後、各Groupに特異的な遺伝子の組み合わせ、及び共通する生化学性状の発見を目指す。
3: やや遅れている
研究1年目及び2年目は新型コロナウイルス対応により本研究を実施する時間が減少し、計画通りに進められなかった。さらに、研究期間中に本研究の計画と類似した論文が発表されたことで、本研究計画を全面的に変更した。これらの事由により進捗が大幅に遅れた。現在の進捗状況は順調であるが、遅れを取り戻せていない。しかし、研究計画を1年延長したので、研究目的を達成できると思われる。
【令和2年度から令和4年度まで】令和4年度までに全ての試供菌株について予定していた遺伝子型別が完了したが、菌株の多様性は非常に高く、遺伝子型の結果だけではGroupingが困難だった。【令和5年度(研究期間の最終年度)】令和5年度は、ベイズの定理を利用した集団構造の予測によりGroupingを行う。その後、病原因子の保有状況及び生化学性状により各Groupの特徴付けを行い、その結果に基づいた同定法を確立する。令和4年度までの結果では、一部の血清型では固有の病原因子の保有状況や生化学性状を持っていることが明らかとなっていることから、Groupingを行うことで、より明確な特徴付けができると思われる。次に、ヒト及び動物間でGroupの類似性を考察することで、E. albertiiのヒトへの感染経路の特定を試みる。時間的に余裕があれば、遺伝子型別による各Groupから代表的な菌株を選び、全ゲノム解析を実施し、Group間での遺伝的特徴の違いを詳細に調査する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Food Protection
巻: 83 号: 9 ページ: 1584-1591
10.4315/jfp-20-042