研究課題
若手研究
Escherichia albertiiに共通する特徴に乏しいために本菌の同定は難しく、原因菌不明とされた本菌による感染事例は多い。1つの菌種を類似した特徴を持つ集団に細分類するには、進化系統に基づく集団(PG)を定めることが有効である。本研究では、我が国における「E. albertii感染症の検出能を向上」させるために、E. albertiiのPG分類法を確立した後、各PGに共通する生化学性状及び病原因子を明らかにして同定法を確立する。さらに、「E. albertiiのヒトへの感染経路を推定」するため、感染者、動物及び環境にどの様なPGが分布しているかを調査する。
本研究では、Escherichia albertiiのヒトへの感染経路の推定に有用な系統及び遺伝子型別法を開発した。最初に、感染者、動物及び環境由来のE. albertiiについて、大腸菌のmultilocus sequence typing(MLST)で解析される7遺伝子の配列を用いてベイズジアンクラスタリングを行った。その結果、菌株は3つの系統とそれ以外に分かれ、「動物や環境に特異的に分布する系統」と「動物等から人に感染する系統」の存在が明らかとなった。次に、供試菌株について、13個の病原因子遺伝子の保有状況を基に最小全域木を作成したところ、宿主特異的な保有パターンの存在を発見した。
本研究の成果はE. albertiiのヒトへの感染経路の解明に寄与できる。公的研究所では、E. albertiiによる感染症事例が検出されているが、殆どの事例において感染経路が判明しておらず、未だヒトへの主な感染経路は良く分かっていない。本研究では、動物や環境に分布する本菌の一部の系統がヒトに感染すること、さらに宿主によって本菌が保有する病原因子の保有パターンに違いがあることを明らかにした。従って、ヒト由来の本菌株について系統分類や病原因子型別を行うことは感染経路の推定に有効と思われる。また、動物や環境から分離された本菌株についてこれら分類及び型別を行えば、ヒトへの感染リスクも評価できる。
すべて 2020
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Journal of Food Protection
巻: 83 号: 9 ページ: 1584-1591
10.4315/jfp-20-042