研究開始時の研究の概要 |
本研究は, 病原菌や食中毒菌の簡便で迅速な新規遺伝子型別法の開発を目指すものであり, レジオネラ属菌をモデルとして実施する。 具体的には, 以下2点について検討する。 1) 微生物の染色体DNA上に分布するポリプリン-ポリピリミジン配列情報(PolyR15T)を抽出し, その染色体DNA上の位置情報と出現する配列パターンから, 微生物の遺伝子型別法に利用可能なデータセットを検討する。 2) 上記で検討した微生物の染色体DNA上のPolyR15T配列をターゲットに, 三重鎖DNAの形成を利用した検出法を開発し, 迅速な遺伝子型別検査法に応用する。
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研究実績の概要 |
細菌感染による食中毒や感染症等の発生時には、「起因菌の同定」と共に「菌株の型別」を実施する必要がある。本研究は、微生物の染色体DNA上に存在するポリプリン-ポリピリミジン(PolyR)配列情報を利用した遺伝子型別方法論の確立と簡便で迅速な検査法への応用を目的としている。 令和5年度は, 迅速かつ簡便なPolyR配列の検出を目的に, 対象とするPolyR配列の三本鎖DNA形成をトリガーとしたローリングサークル増幅(RCA)反応の検討をした。 前年度は, シール用DNAと一本鎖DNAをT4 DNA Ligaseを用いて予め環状化した一本鎖環状DNAプローブを用いてRCA反応をおこなった。しかし, 従来から報告があるように、環状化反応の際に用いるシール用DNAのエクソヌクレアーゼ等による完全除去は難しく, シグナルノイズ比の悪化が確認された。 本年度は, 上記問題点の改善を目指し, パドロックプローブ (PLP)を利用したRCA法を検討した。本反応は, 1)三本鎖DNA形成用モレキュラービーコン (MB) が目的のPolyR配列と三本鎖DNAを形成する反応, 2) Ligaseを用いて, 1) により開環したMBの3’末端側配列と結合したPLP末端を環状化する反応そして, 3) Phi29 DNA polymeraseを用いたRCA反応からなる。1)の反応は, 弱酸性条件下, 高塩濃度で反応させる必要があるため, その後の2), 3)の酵素反応を円滑に実施できるかがカギになる。そこで, 購入が可能な市販の各種LigaseとPhi29 DNA polymeraseから最適な組合せ及び反応条件の検討を実施した。目的のPolyR配列を含む分子内二本鎖DNA断片を標的として, 本反応を最適化した。
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