研究実績の概要 |
2023年度に, 全国の大学等の産業保健サービス提供部門宛に質問紙調査を行なった。計1118校に調査票を送付し, 返送数は25.8%, 有効回答23.3%だった。 内訳は, 大学208校(全施設の1/4), 短大49校(同1/6), 設置区分別では, 国立19.5%, 公立14.9%, 私立64.0%で, 定期健診対象教職員数は50-299人が約5割で最多だった。6割で外部非常勤医師のみを産業医選任し, 1/4に産業看護職は不在で, 1割で衛生管理者・衛生推進者が非選任で、6割で学生健康管理部門が産業保健実務を主に担当していた。教職員数が少ないほど産業保健サービス資源が限られていた。 大学等の産業保健活動実態の現状を25の選択肢で尋ね, 特定の属性の健康管理に関連した対応[高年齢労働者, 障害者, 家庭内ケア責任多い労働者, 女性や性的マイノリティ, 外国人労働者, 兼業・副業を行う者]や, テレワーク増加に伴う健康管理, 化学物質の自律的管理移行に伴う健康管理は, 「あまり/まったく実施していない」の回答が多かった。 兼業・兼務の労働時間把握していない/長時間勤務者の把握に労働時間の情報使用していない大学等は, 教育・研究者20.7%/18.8%, 職員(管理職)35.2%/10.3%, 職員(管理職以外)34.9%/6.1%だった。2019年働き方改革法施行前後の長時間勤務者の医師面接数は「ほぼ変わらない」が7割だった。COVID-19 pandemic下のBCPに伴う働き方変更の影響が, 現在の恒常的な働き方改革要素に維持されている度合いは、0(全く維持されていない)-10(全部維持されている)で尋ねたところ, 平均3.8点, 中央値3点だった。 多くの大学等で, 産業保健サービスの資源が限られ, 働き方改革に対応した産業保健サービスの提供に課題があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は, 研究計画当初の調査想定対象が, 事業場側の大学等と労働者側の教員・研究者であった。2020年度~2022年度に関しては, 各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)が, 新型コロナウイルス感染症流行により感染症対策の中心的枠割を果たすために業務多忙であり本研究の協力を得ることが難しく, 初年度から引き続き調査協力の調整が予定通り進まなかった。 しかし, 2023年度には, 各大学の人事部門や産業保健サービス提供部門(主に保健センター等)に対して, ● 2019年度の働き方改革法施行後の健康管理施策への影響, ●2020年にパンデミックとなり2023年5月上旬に5類化した新型コロナウイルス感染症対策に伴う一時的な働き方の変更が, 引き続きどの程度定常的な働き方改革の一部として移行し継続しているか, 合わせて調査を行なうことができた。 不測の事態による調査計画の遅れのため, 研究年度を1年延長して, 2024年度も研究を継続していく。
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