研究課題/領域番号 |
20K19019
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
麦田 裕子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (00804874)
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研究期間 (年度) |
2021-02-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 失禁関連皮膚炎 / 細菌 / 尿 / オムツ / ラット / 真菌 / マイクロバイオーム解析 / メタボローム解析 |
研究開始時の研究の概要 |
尿便の皮膚付着により発生する失禁関連皮膚炎は、激しい疼痛や掻痒感から患者のquality of lifeを低下させるため、予防が重要である。 近年、細菌が培養されないにも関わらず強い臭気を伴う尿は、失禁関連皮膚炎発生に関連することが明らかになった。尿培養では検出されない尿中細菌・真菌が存在し、その分泌酵素や代謝産物を含む尿が失禁関連皮膚炎発生に寄与している可能性がある。 本研究では、臨床患者の尿のオミックス解析、およびIADモデルを用いた動物実験により細菌・真菌による尿の成分変化がIAD発生をもたらすという新規メカニズムを解明し、尿中細菌真菌叢と尿成分の変化に着目した新たな予防ケアの開発を目指す。
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研究実績の概要 |
【背景】失禁関連皮膚炎(incontinence-associated dermatitis, IAD)は激しい疼痛や掻痒感から患者のquality of lifeを低下させるため予防が重要である。本研究の目的は、細菌・真菌による尿の成分変化がIAD発生をもたらすという新規メカニズムの解明、および尿中細菌真菌叢と尿成分の変化に着目した新たな予防ケアの開発である。 【本年度実施内容】 本研究は臨床調査(実態調査)と、動物実験(ラットIADモデルにおけるメカニズム解明)実験より構成される。このうち動物実験について、細菌含有人工尿によりIAD様所見を発生するラットモデルの確立を行った。 【方法】9週齢 雄性Hairless Wister Yagiラットの背部皮膚に対し、パッド貼付によるIAD様皮膚炎の誘発処理を行った。皮膚処理の具体的内容は、1%ラウリル硫酸ナトリウムによる前処理(皮膚バリア機能低下処理)の後、細菌含有人工尿(使用細菌:Proteus mirabilis)を含ませた尿吸収パッドの10時間貼付を5日間繰り返した。 【結果】皮膚処理3日目より強い皮膚発赤が生じた。5日目には組織学的変化として表皮の肥厚、ケラチノサイト分化異常、赤血球の漏出、真皮コラーゲン菲薄化を認めた。MPO陽性細胞数の有意な増加、TNF-α発現の有意な上昇、CD31及びPTX3陽性細胞の発現が確認され、顕著な炎症反応と血管内皮障害が明らかとなった。しかし、組織内細菌の定量結果では、皮膚処理による細菌量の有意な増加を認めなかった。これらの結果から、細菌尿によるIAD発生は、細菌自体の組織内への侵入によるものではなく、細菌の存在により変化した尿成分変化がIADに寄与するとことが示唆され、仮説を支持する結果を得た。本モデルは、細菌真菌含有尿によるIADの病態解明や予防ケアの開発への活用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の当初計画に含まれていた内容のうち、失禁を有しオムツを使用している高齢者を対象とした横断観察研究が未実施であるため、「遅れている」の区分にした。 臨床現場以外で実施可能な研究として、動物モデルの確立を行った。
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今後の研究の推進方策 |
臨床調査にてIAD患者と非IAD患者の尿サンプル中の細菌真菌叢の特徴および代謝産物を同定する実態調査を予定している。 また、並行して動物モデルを用いたin vivo実験を行う。具体的には、細菌真菌含有尿における細菌真菌由来の物質によるIAD発生のメカニズム解明を予定する。
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