研究実績の概要 |
本研究の目的は、大学病院ICUにおけるMRSA交差伝播のリスク低減方策構築に向け、交差伝播の実態と課題を明らかにすることである。本研究は、A大学病院医学部倫理委員会の承認を得て開始した。 A大学病院GICUに入室する対象患者のデータを使用し、MRSA交差伝播と皮膚障害、その他因子との関連性を検討した。その結果、ICUに緊急入室する患者において、MRSAを持ち込む独立した危険因子として気管切開(OR:4.9、95%CI:1.7-14.2)が抽出された。皮膚障害を有する患者の割合はMRSA持込患者に多い傾向があったが、統計学的有意差は認めなかった。本研究について、学術集会にて発表した(板津ら,第50回日本集中治療医学会学術集会, 2023)。加えて、関連する学術誌に投稿中である。 続いて、さらなるMRSA伝播対策を模索するため、ICUへの緊急入室時に気管切開を有する患者の患者背景等について調査を行った。調査の結果(対象16名)、【気管切開から入室までの期間が長い患者】が入室時にMRSAを持ち込む可能性が高かった。また、対象のほとんどが入室直後に吸引処置を必要とし、夜勤帯に入室することが多かった(69%)。MRSA持込群の多くが喀痰に保菌をしていた。従って、ICU緊急入室患者が気管切開を有する場合、呼吸ケア時は夜勤帯などで医療従事者が少ない場合も含めいかなる場合でも感染予防策を徹底する必要があることが明らかとなった。本研究について、学術集会にて発表した(板津ら,第51回日本集中治療医学会学術集会, 2024)。 本研究に関連する研究成果を学術雑誌に投稿し、掲載された(板津ら, 日本救急医学会中部地方会誌, vol.17, 2021; 板津ら,愛知医科大学看護学部紀要, vol.21, 2022; Itazu et al, Nagoya Medical Journal, 2023)。
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