研究課題/領域番号 |
20K19167
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分58070:生涯発達看護学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
太田 良子 金沢大学, 保健学系, 助教 (60832186)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | AYA世代 / がん / 妊孕性 / トランスセオディカルモデル / 現象学 / AYA世代 / 女性 / がんサバイバー / 意思決定 / AYA / 造血器腫瘍 |
研究開始時の研究の概要 |
白血病やリンパ腫などの造血器腫瘍の女性サバイバーを対象として、治療により障害された生殖機能を自己受容し、家族形成に向けて多様な選択肢があるなか、自ら選んでいける自律性を高める介入プログラムを開発する。 文献検討で概念枠組みを作成し、小集団の介入プログラムを考案。がんサバイバー同士の対話を促し、助産師がファシリテーターとして入ることで障害された生殖機能について向き合い自己受容を促す。 プログラムは造血器腫瘍の治療に関わる医師、看護師より意見を聴取し改善する。さらに、がん看護専門家、助産研究の専門家のスーパーバイズを受けて検討され、プレテスト、ポストテストで有効性を評価する。
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研究実績の概要 |
本年度は、生殖医療と心理学的な知見も踏まえたアプローチを実現するため、産婦人科医師、公認心理士を研究チームに加えて内容を検討した。 性腺機能の低下は身体症状として知覚しにくい。先行研究より将来妊娠できるかどうか懸念を持ち続けることは、心理的苦痛に繋がることが明らかになっている。A世代とYA世代別に行動特性と苦痛に対する感情調整機構について文献検討を行った結果、身体症状を伴わない性腺機能の低下から目を逸らし、先送りすることが課題として浮き彫りになった。そこで、本プログラム介入は先送り行動に焦点を当てることになった。 先送り行動の変容初期段階では、性腺機能の低下を自分事として捉えることが重要である。看護介入の理論だけではなく、健康行動とヘルスプロモ―ションに関わる理論まで、広範囲に文献検討を行い、James O.prochaskaが提唱したトランスセオレティカルモデル(以下TTM)がプログラムの基盤理論として適切であることが分かった。TTM理論を基に、行動変容に有用とされる心理療法も一部取り入れて、プログラムの構成要素を考案した。知識の取得による問題の意識化と心理療法により自己の再評価を主軸として、産婦人科医、公認心理士、助産師が各パートを担当し、複数回開催する方式とした。 しかし、対象者募集のため、腫瘍内科医、造血器腫瘍の患者会メンバーが参加した研究会議のなかで、プログラムへの参加に抵抗を感じるAYA世代が多く、実現可能性が低いという結論に至った。一連のプログラム開発を通して、AYA世代にとって性腺機能障害の課題に、がんの経験が深く根ざしており、健康行動の増進の観点から画一的にプログラムを実践することは難しいことが明らかになった。先送り行動には、実存的苦痛からくる防衛が関わっており、性腺機能障害への懸念も複雑な様相を呈していることが今後の課題として抽出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの文献検討と専門職種間の会議により、考案していた健康行動の増進の観点から画一的にプログラムを実践することは難しいことが明らかになった。 研究フィールドが都市部ではないため、AYAがんの罹患数が少なく、対象へのアクセスが難しいこと、グループ介入に対する抵抗感も大きいことも一因である。 AYA世代のがんの多様な体験に立ち戻り、プログラムの構成要素を再度検討するため、インタビュー調査を開始する予定である。 インタビュー調査は、妊孕性の懸念と必要とされる支援について、当事者の視点から明らかにする現象学的アプローチを用いる予定である。そのため、当初予定していた計画から遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
がんの診断を受けた後の人生の中で、妊孕性の懸念がもつ意味は変容し、がんの治療の経過も相まって複雑な様相を呈している。 がんの闘病と並行して、妊孕性の温存に始まり、不妊治療、妊娠、出産、あるいは不妊治療の終結など、サバイバーとしての人生における選択は、一つひとつが重要な意思決定の連続である。情報のニーズが満たされていないほど、意思決定の葛藤が大きくなるため、 知識の充足を主とした意思決定支援や、心理的苦痛の緩和を目的としたプログラムが開発されている。しかし、実存的苦痛からくる防衛や、複雑な様相を呈する妊孕性の懸念のもつ意味を理解し、生きづらさを支える支援は十分ではない。 そこで、がん治療によって生じる妊孕性の懸念が、人生においてどのように立ち現われ、経験されているのか、それが本人にとってどのような意味をもちながら、がんの診断を受けた後の人生を生きているのか現象学で明らかにするインタビュー調査を実施する予定である。対象者選定に腫瘍内科医の協力を既に得られており、倫理申請が通り次第、データ収集を行う。得られたインタビューデータは、Colaizziの7段階の分析を用いて、現象学的に読み解き、今年度中に論文化を行う。 同時に、必要とされる支援もインタビュー調査によって明らかにし、プログラム開発の構成要素を抽出する予定である。
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