研究課題
若手研究
現在、認知機能低下やBPSDの進行を抑制しうる、安価で汎用性に優れた新しい非薬物療法の開発が切望されている。そこで本研究では、「Virtual reality(VR)によって高齢者の精神症状が大きく改善する」「統合医療によってアミロイドβの脳内蓄積を阻害するγ波が発生する」という申請者らの独自の知見を基に、VRなどの最新テクノロジーを用いた回想法と統合医療のハイブリッド型アプローチが認知機能に与える影響について検証する。これにより、認知症問題に歯止めをかける新たな方法の開発を目指す。
介護施設利用中の方合計40名にご協力いただき、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)群20名、モニター群20名に分類した。週に1回、各回10分ほどのHMDあるいはモニターを活用した回想法を3か月実施し、開始前、3か月後に認知機能を評価した。また、各回想法セッション前後の不安の程度やセッション後の満足度や副反応を評価した。認知機能スコア変化量については、モニター群では3か月後には有意なスコア増加を示した。不安の程度は、両群ともに介入前に比べて介入後は有意に減少していたが、両群間に有意差は認められなかった。平均満足度は、HMD群よりもモニター群が有意に高かった。副反応は両群ともに認められなかった。
認知機能スコア変化の結果から、HMDよりもモニターを用いた回想法の方が認知機能の低下抑制に貢献する可能性が示唆された。また、モニター群の方がHMD群よりも満足度が有意に高かったことから、テレビ等で慣れ親しんでいるモニターの方が高齢者にとっては受け入れられやすく、HMDより大きな効果が得られたのではないかと考えられた。後期高齢者を対象とし、3か月間にわたるVR回想法の効果をHMDとモニターで比較した臨床研究は世界でも少ないため、本研究の成果は、DX時代の新たな認知症予防法を検討するにあたり貴重な知見となり得ると考える。
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