研究課題
若手研究
本邦の透析患者の高齢化は深刻である。透析患者は低栄養、慢性炎症、異化亢進/同化抵抗性およびアミノ酸の喪失といったフレイルの危険因子を多く有するが、高齢化がフレイルのリスクをさらに上昇させる。運動療法には透析患者のフレイルの予防・改善が期待されるものの、高齢患者におけるエビデンスは確立されていない。本研究は透析患者における運動療法の効果について検証し、臨床で実践可能かつ効果的な運動プログラムの立案を目指す。
本邦において、血液透析療法を受ける末期腎不全患者の人口は年々増加し続けており、透析患者の高齢化が進行している。大規模な疫学調査によれば、透析患者の6割以上が日常生活に何らかの介助を必要としていることが報告された。この日常生活動作の遂行能力には身体機能の低下が強く関わっており、高齢透析患者の身体機能改善を目的とした運動療法介入の科学的根拠を構築することが今日の腎不全医療では求められている。これまでに研究参加施設の準備、実態把握のためのデータ収集・解析を中心に実施し、筋肉量の減少と身体機能低下に特徴づけられるサルコペニアは約40%の患者に認められ(Kakita D, Matsuzawa R et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022)、サルコペニアは生命予後を悪化する危険因子であることを明らかにした(論文投稿中)。2022年4月の診療報酬改定の中で透析時運動指導等の算定が可能となり、透析領域における運動療法指導等に対する関心が高まっている。こうした背景を受け、全国の透析施設を対象とした実態調査を行い、運動療法指導の実施率や実施者等をまとめ発表した(Sofue T, Matsuzawa R et al. Sci Rep. 2024)。高齢透析患者において、日常的に透析施行中の運動療法指導を受けている者(治療群)とそうでない者(対照群)の間でアウトカムを比較したところ、運動療法指導が効果的に働く可能性が示された(執筆中)。これまでに透析患者に対する運動療法の効果に関する報告は散見されるが、高齢患者に対するエビデンスは少ないのが現状であった。また一方で、高齢患者における低栄養の問題が浮き彫りになり、高齢透析患者に対しては運動療法単独ではなく、栄養療法を併用した治療の必要性が示唆された。
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