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恐怖条件付け実験系を用いた慢性痛の病態と治療効果の客観的評価の試み

研究課題

研究課題/領域番号 20K19399
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分59010:リハビリテーション科学関連
研究機関奈良学園大学

研究代表者

前田 吉樹  奈良学園大学, 保健医療学部, 専任講師 (10738610)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
キーワード痛みの恐怖 / 自律神経反応 / バーチャルリアリティ / リハビリテーション / 恐怖条件付け / 慢性疼痛 / 条件付けの消去 / 集学的リハビリテーション / 皮膚電気活動 / 皮膚電位反応
研究開始時の研究の概要

恐怖条件付けとは、通常、恐怖を引き起こすことがないレベル刺激(条件刺激)と恐怖を起こす刺激(無条件刺激)とを組み合わせることにより、条件刺激のみの提示で恐怖反応を引き起こす学習反応である。痛みの慢性化にはこの「恐怖条件付け」が関与するとされている。本研究では、実験的に導入した「恐怖条件付け」とその「消去」の動態を慢性痛患者と健常成人とで比較、違いを明らかにし、慢性痛の病態を解明する。さらに患者に対する集学的リハビリテーションの介入前後で、その病態がどのように変化するかを検証する。

研究実績の概要

本研究は、実験的な侵害刺激を用いた「恐怖条件付け」実験系により、健常人と慢性痛患者とで痛みに対する恐怖心の獲得過程とその消去過程がどのように異なるかを検証し、痛みの慢性化メカニズム解明の一助とすることを目的としている。しかしながら慢性痛患者に対するデータ収集を予定していた篤友会千里山病院で、対象となる入院リハビリテーション治療を受ける患者が減少、当初の研究目的を達成するのは困難と判断した。そこで令和5年度では、これまでに構築した恐怖条件付けの実験系を応用した、新たな基礎研究を展開した。
第一に、臨床での応用が進んでいるVR(Virtual Reality)の鎮痛メカニズムを解明する研究を行った。具体的には、実験的痛み刺激に対するプラセボ効果がVR没入によってどのように変化するかを検証した。教示によるプラセボ効果は2D映像視聴時でもVR装着時でも差はなかったが、後者の方が痛みを予期しているときのSCR(皮膚コンダクタンス反応)がより小さくなることがわかった。これにより、VR鎮痛には痛みの予期に対する自律神経覚醒の低下がメカニズムとして関与することが示唆された。
第二に、個人の性格と痛みとの関連性を検証する研究として「攻撃性」の変化に焦点をあてて、FPS(First Person Shooter)ゲームのプレイ中に痛み刺激を受けることでプレイ後の行動がどのように変化するかを検証した。結果、ゲーム中のアバターの死亡に合わせて痛み刺激を受ける条件の方が、ゲームプレイ終了後の恐怖心が強くなることがわかった。この現象が、痛みの慢性化と攻撃性の上昇との関連性にどのように影響するかを今後詳細に検証する。
これらの研究は痛みに対する予期や学習が、痛み行動にどのように影響するかを明らかにするという点で本研究課題の主旨と一致している。研究成果は今年度中に学会発表、および学術論文として投稿予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究は当初、慢性痛患者と健常成人に対し「恐怖条件付け実験」を日をまたいで実施し、その結果を比較するという研究デザインであった。しかしながら、新型コロナウィルス感染症拡大やその間の診療体制の変化等に伴い、対象となる患者を募集・選定することが難しくなった。そのため、令和4年度の終盤から5年度にかけ研究計画を大きく変更することとした。
変更された研究計画においても、本研究課題でテーマとしている痛みの「恐怖」「学習」に引き続き焦点を当てた。まず、近年痛みの治療にも応用が広がりつつあるVR(バーチャルリアリティ)を用いて、痛みの恐怖を教示によって取り除く効果がVRでさらに強化されるのかどうかを検証した。条件付け反応の指標であるSCR(皮膚コンダクタンス反応)を用いて、VR視聴後と非VRでの映像視聴後とでは痛みの予期に対するSCRの反応性が異なることを実証することができた。さらに、痛みの診療で問題となる「攻撃性」の変化について、ビデオゲームと痛み刺激を組み合わせた実験的研究を行った。痛み刺激の有無によって攻撃性が変化する現象までは捉えることができなかったが、「痛み」の存在がゲームに対する恐怖心を強めることを示すことができた。
これらの研究を踏まえた上で、痛みの予期や恐怖の学習が行動にどのように影響するかを検証すべく、さらなる実験を計画している。

今後の研究の推進方策

令和5年度では、VR(バーチャルリアリティ)を用いた鎮痛効果のメカニズムを、生理反応を用いて示唆することができた。ここから、反対に自律神経活動の調整から鎮痛効果を高めることができないかと考えた結果、自律訓練法に特化したVR機器「セラピアVR(株式会社xCura製作)」を用いた実験を準備している。VRによる自律訓練法はここ数年でいくつかの研究がなされているが、痛みの恐怖や学習にどのように影響するかについては検証されていない。本研究課題のテーマに新たな知見を加えることが可能と考える。
また痛みに影響する特性として、攻撃性の次に「社会的疎外感」に注目している。条件付け実験装置を使った心理生理学的データと、痛みに対する恐怖心や拒絶に対する過敏性などの特性を捉える質問紙法によるデータから、痛みをネガティブに解釈しやすい特性について検証する研究を準備している。
以上のように、本研究課題は今年度で終了となる見込みだが、これまで得られた知見や構築されたシステムを活用し、今後も様々な痛み研究を展開・発展させていく。また、所属機関である奈良学園大学保健医療学部に修士課程が開設されたことから、本研究課題の期間中に強固な研究体制を整えたいと考えている。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] Virtual Realityはゲーム中断中および終了後でも痛みへの反応を変化させるか?2022

    • 著者名/発表者名
      増谷 結菜, 前田 吉樹
    • 学会等名
      第12回 保健医療学会 学術集会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2020-04-28   更新日: 2024-12-25  

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