研究課題/領域番号 |
20K19592
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59030:体育および身体教育学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鴻巣 暁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (80838483)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 予測的姿勢制御 / 大脳小脳連関 / 内部モデル / 運動学習 / 大脳―小脳連関 / シミュレーション / 大脳ー小脳連関 / ラット / 予測的運動制御 / 姿勢制御課題 |
研究開始時の研究の概要 |
2020年度はラットを用いた新規の姿勢制御課題を構築し、予測的姿勢制御における小脳の特定領域の役割を明らかにする。2021年度から2022年度前半にかけては、2020年度に構築した実験課題を用いて予測的姿勢制御の神経機構を明らかにする。具体的には、小脳を含む中枢神経系に電極を配し、課題実行中の神経活動を記録する。これにより、大脳―小脳間、および各脳領域内の情報伝達・変換の過程を明らかにする。2022年度後半は、大脳皮質前頭領域の障害実験により、予測的運動制御における大脳皮質各領域の役割と神経再編機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
中枢神経系の情報処理は時間遅れやノイズを伴うため、日常動作やスポーツ動作の素早く円滑な実行には予測的な姿勢制御が不可欠である。脳疾患患者の運動分析等により予測的姿勢制御に関与する中枢神経領域が同定されつつあるが、詳細な神経機構は明らかでない。そこで、本研究ではラットにおける新規の姿勢制御課題を構築し、大脳―小脳連関の局所的破壊実験および神経活動記録により、予測的姿勢制御の神経機構を解明する。2022年度は2021年度に引き続き予測的姿勢制御の責任領域を同定するための実験と解析を行った。体幹部および四肢の筋を制御する大脳皮質運動領野と密に神経連絡する小脳虫部Ⅳ-Ⅷ葉を局所的吸引除去および阻害薬により障害した小脳障害群、健常群および偽手術群において床傾斜の外乱試行を繰り返し測定し、群間で運動学データを比較した。初期の外乱試行における姿勢変動のパターンや大きさには群差が殆ど無く、姿勢変動の減少パターンも群間で類似していた。しかしながら、学習速度(試行番号と腰部の移動量の関係を指数回帰することで、経験試行数に対する姿勢変動の低下率を算出した)は障害群で有意に小さく(時定数が偽手術群に対して平均35%)、障害領域のサイズと相関した。したがって、「外乱に対する予測的姿勢制御のための内部モデルの構築に小脳虫部が中心的な役割を果たす」という研究計画書の仮説は支持された。本結果は、現在、原著論文として国際誌に投稿し審査を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第二の研究課題である「予測的姿勢制御における小脳虫部の役割」の実験とデータ解析に想定以上に時間を要したため、2022年度初めの開始を予定していた第三の研究課題「予測的姿勢制御の神経機構」の開始が遅れることとなった。当初、予測的姿勢制御の学習が小脳障害により完全に抑制される結果を予想していたが、実際にはそのようにならなかった。原因の一つとして、障害手術から測定までに数日間おいたこと(手術部位の回復のため)による神経回路の再編成の可能性が考えられた。この可能性を検証するため、阻害薬を用いた障害実験を補足的に実施した。これに加えて、障害群-健常群間の差を定量化するための分析等に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は第三の研究課題である「予測的姿勢制御の神経機構」に取り組む。当初の計画どおり小脳虫部が予測的姿勢制御に中心的な役割を果たすことを支持する結果が得られたため、外乱に対する準備期間における虫部および大脳皮質前頭領域の神経活動を同時記録し、それらの神経同期に着目した分析を実施する。また、大脳―小脳連関の神経基盤を明らかにするため、両領域の中継核を光遺伝学的に抑制した条件で運動学変数および神経活動を測定する。
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