研究課題/領域番号 |
20K19726
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
金子 潤 中京大学, 体育研究所, 特任研究員 (60720810)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 裸足 / はだし歩行 / はだしのトレイル / 日本語版回復指標 / 森林 / 自然との共生 / 気候変動 / 歩行 / 自律神経機能 / バランス能力 / 立位姿勢 / 重心動揺 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は芝生や砂利道などの屋外を「はだし」で歩くことの効果について自律神経活動と立位姿勢バランスの観点から明らかにするため、「はだし」歩行の前後に起立負荷試験(座位2分→立位2分→座位1分)とその際の立位時の重心動揺計測を実施し、心拍変動解析を用いた自律神経機能の評価と重心動揺指標から立位姿勢の評価を行う。また、靴底が薄い裸足感覚シューズの効果についても同様に検討する。さらに、心理的ストレス解消手段としての「はだし」歩行の有用性を検討する。このように心身への影響を検証することで、これからの履物のあり方を提案すること、姿勢改善およびストレス解消のための手法開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、屋外を「はだし」で歩くことの効果について足型の変化を中心に検証している。昨年度に続き新型コロナウイルス影響を受け、計画通りの計測は困難であった。そのため、森林内の歩行路(はだしのトレイル)作成を進めながら、フィールドづくりとその応用についての検証も続けた。 今年度は足型の変化をフィールドづくりの評価指標としつつ、森林環境の有する心理的回復効果を調べるために,ROS(Restorative Outcome Scale;回復感指標)の日本語版(ROS-J)を用いて、トレイル作業協力者を対象に、「はだし」で森林内の歩行路に入る前後での得点の変化を比較した。 その結果、合計得点は、はだしで森に入った後に上昇した。項目別にみると、「E:日々の心配事に煩わされることがない」「F:頭がすっきりしている」の2つが特に上昇が大きかった。森林浴後に得点が上昇すると報告されている先行研究と同様の傾向がみられた。ただ、靴での歩行との比較ができなかったため、本結果だけでは「はだしの効果である」とは言い切れない。しかしながら、足裏が直接大地に触れ、心地良さを味わうことは心理的にも影響があることが推察された。 また、歩行路を作っている森はかつて盛り土でできた土地であり、粘土質の土で地面は非常に硬く、降った雨が浸透しにくく、木々の根が浅い。そして傾斜地のため、落葉樹が秋に葉を落としても、雨が降ればその落ち葉は粘土室の表層を染み込まずに流れる水とともに下へ下へと流されてしまっていた。そこで落ち葉や竹炭等の有機物で土を覆い、土壌改良に取り組んだ。その結果、「はだし」初心者には痛くて不快であった歩行路が1年間で柔らかい土壌へと変化し始めた。「はだし歩行」は人間の健康づくりだけでなく、森の健康づくりにも繋がる可能性が示唆され、人間と自然環境の両面からの検討を引き続き進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている 本年度も新型コロナウイルス流行の影響を受け予定通り計測を実施することは困難であった。森林内での歩行路(はだしのトレイル)づくりでは、人間の「歩きやすさ」だけでなく、森の生物多様性についても考慮しながら研究を進めている。はだしのトレイルを作るための知見は蓄積されつつあり、森林内に歩行路を作成するだけでなく、場所を変えても同様の体験ができるツールの開発を進めている。様々な場面で「はだし」体験をすることは、自然と人間の共生が社会課題として挙げられる中、重要な取組であること言える。次年度は社会への波及を念頭に、「はだし」での歩きやすさを検証し、さらには感性を評価する手法を用いて、「はだし歩行」についてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が三年続き、施設使用の面でも、人を対象として計測を進めることも非常に困難であった。そのため、当初の研究計画を変更して、「はだし」で歩きやすい歩行路(はだしのトレイル)を森林内に作成することとした。歩行路づくりを進めるにあたり、人間にとって「歩きやすさ」を追求するだけでなく、森林にとっての健康についても考えが及ぶようになった。歩行路を作成している場所は、造成地であり、盛り土に植林しており、地面は硬く、雨が降っても水が浸透しない場所であった。そういった場所は「はだし」に慣れていないと、「痛い」場所であり、居心地が悪く歩きにくい場所である。これらの改善手段として、近自然工法を用いて階段を作り、落ち葉や枝葉の有機物を路面に投入した。その結果、雨は浸透するようになり、森林内の植生も多様性を増しつつある。こうした大地の変化は、「はだし」で歩きやすい大地が、気候変動による災害対策にもなりうることを示唆している。 これまで既存の手法を用いてアンケートや体力に関する調査をしてきたが、捉えきれてないことも多く、最終年度は「はだし歩行」の全体像を推察すべく感性工学的な調査(SD法)と歩きやすさを加速度センサーを用いて評価することを検討中である。
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