研究課題/領域番号 |
20K19727
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
木村 智子 京都橘大学, 健康科学部, 准教授 (00449852)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | メタボリックシンドローム / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 腸内細菌叢 / 低出生体重児 / 骨・関節機能 / 筋機能 / 運動耐容能 / 胎生期低栄養 / 肥満 / DOHaD / NAFLD / 低栄養閉経モデル |
研究開始時の研究の概要 |
近年、肥満増加やNAFLD罹患率上昇、胎生期低栄養曝露による成長後肥満リスク増大、閉経後の内臓脂肪蓄積増加が注目されるようになっている。そこで今回、閉経後の高度肥満とこれに続くNAFLDが、胎生初期の低栄養ストレスとどのように関与しているのかを解明する。 本研究では、脂肪細胞へと分化する間葉系幹細胞の存在する時期やNAFLDに関わる肝芽細胞の分化時期に低栄養曝露させることで、未分化な前駆細胞の特性変化が子孫細胞にまで引き継がれることに着眼しつつ、肥満/NAFLD発症メカニズムについて、一般的なものと胎生初期低栄養ストレスによるものの相違を確認し、低栄養ストレスによる特異的な作用機序を解明する。
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研究実績の概要 |
これまで胎生期低栄養ストレスが生後のミスマッチによるメタボリックシンドローム(MS)を発症させるのか、Wistarラットを用いた研究を行ってきた。そこで母獣が妊娠5.5~11.5日の間、給餌量を対照群の40%に制限した低栄養群と対照群の産仔にOVXを施した胎生期低栄養+閉経モデルにおいては、高度肥満ならびに非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症リスクが高まることが示唆された。 昨年度は、胎生ごく初期の低栄養状態が閉経というトリガーを契機に高度肥満・NAFLDなどの発症リスクを高める背景を探索するなかで、閉経モデルにおいては摂餌量自体が増加したものの、低栄養モデル特有の者ではないことが明らかとなった。さらに、腸内細菌叢の影響を鑑み、ラットの糞食という性質を利用し低栄養群を対照群と同居させることで高度肥満・NAFLDなどの発症リスクを回避できるか検証を試みたところ、十分にレスキューすることができないばかりか、対照群の発症リスクが高まるという結果が得られた。 今年度は、低栄養群の腸内細菌叢の何が大きなトリガーとなっているのかを明らかにするとともに、「MS関連分子の動向」や「NAFLD関連分子の動向」を視野に入れつつ、肝臓組織内や脂肪組織、腸管など肝外臓器との相互作用が寄与するというmultiple parallel hit theoryメカニズムの解明を進めていく予定である。さらに、肝組織内のNAFLD関連遺伝子発現解析のみならず脂肪組織から分泌される炎症性サイトカイン・アディポカイン(TNF-α/IL-6/レプチン/アディポネクチンなど)ならびに、腸管から生じる分子(フルクトース/遊離脂肪酸/トランス脂肪酸など)や腸内細菌由来の分子(LPS/短鎖脂肪酸など)など糖脂質の肝毒性分子なども確認しながら、脂質代謝メカニズムに与える影響について検討を重ねていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度立案した新たな研究計画に従い、実験動物を用いた実験研究を進めている。また、生後の環境とのミスマッチという観点から、胎生期低栄養環境であった個体が成獣期に摂取する餌の種類や摂餌量などについても調査を重ねるため、餌の種類を変更することに伴い、卵巣摘出術の時期や材料採取時期なども変更しながら研究を進めている。さらに、内臓脂肪量や非侵襲的に脂肪肝の進行状況を把握すべく、MRI撮影やエコー撮影を併用しながら、経過観察しながら現状把握に努めている状況である。 現在、すべての個体について材料採取を終えた段階である。ここからは、得られた情報を基に解析を進めながら結果をまとめて学会発表等を行って行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
胎生期低栄養+閉経モデルにおいて、高度肥満に陥っていることを定量的に解析するために行ったMRI画像の解析により内臓脂肪量や皮下脂肪量を定量していく予定である。また、NAFLDに陥っているか否かについても、肝臓のエコー像ならびに肝組織切片をオイルレッドO染色した上で脂肪蓄積度を定量し、比較検討していく予定である。 肥満症患者と非肥満症者では、腸管内の代謝産物量や腸管ホルモン分泌の違いなどが認められており、腸内細菌叢の組成や機能に差異があるとされている。最近の報告では、NAFLD患者やOVXマウスでは、腸内細菌叢の組成が変化していることやOVXマウスでは、脂肪酸代謝に関連する脂質合成関連遺伝子PPAR-γや脂質摂取関連遺伝子VLDLRの発現が上昇し、PPAR-αの発現が低下するなど脂質代謝異常をきたしていることが報告されている。したがって、胎生初期低栄養のラットは、腸内細菌叢の変化を介して閉経後の高度肥満やNAFLDを生じる可能性が考えられる。 そこで今後は、胎生期低栄養に起因する閉経後肥満や糖・脂質代謝異常と腸内細菌の構成や機能との関連の要因を解明するために、対照群・低栄養群のみならず、同居群の閉経モデルラットにおけるおける腸内細菌叢の組成や機能について、網羅的な解析を進めていく。
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