研究課題/領域番号 |
20K19740
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60010:情報学基礎論関連
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研究機関 | 神奈川大学 (2023) 東京工業大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
河野 友亮 神奈川大学, 情報学部, 助教 (00837586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 量子論理 / ヒルベルト空間 / 内積 / 確率過程 / 論理モデル / 演繹体系 / 量子観測理論 / 複数粒子 / 二項関係 / 論理演算子 / エンタングルメント / シークエント計算 / 完全性 / 様相 / 観測者の知識 / 数理論理学 / 量子情報科学 / 量子力学 |
研究開始時の研究の概要 |
量子論理は量子力学の観測命題を分析する分野であり、量子情報科学への応用上も重要な論理であるが、現状では分析できる事柄が十分でないという問題が存在する。 そこで本研究では、観測者の知識の変化等の、量子論理に不足している概念の中でも重要と思われる概念を様相論理記号として追加し、有用な量子論理の発展系を構成することを目的とする。結果として、量子回路モデルの分析という量子力学方面の成果と、数理論理学方面に有用な道具や分析が得られることが期待される。
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研究実績の概要 |
昨年は主に2つの成果があった。 一つ目は、確率値に関する命題を詳細に扱える量子論理の発展形を構成できたというものである。伝統的な量子論理では量子状態間の内積に関する情報として、直交しているか否かのバイナリ情報しか扱えなかった。今回構成した論理は、内積の任意の実数値に関する命題を扱えるようにしたものである。量子論の状態空間であるヒルベルト空間においては内積が非常に重要な役割を果たしており、その値が命題として扱えれば、直交非直交の言語だけでは扱えなかった様々な性質が論理で扱えるようになることが見込まれた。そこで、今回はその知見を基に新たな論理とそれに付随するモデルを構成し、これらにおいてはヒルベルト空間の様々な重要な性質を表現および分析できることを示した。特に、射影と確率の変化に関する法則の一部や、空間の次元に関する命題を論理式で表現できることを示した。また、この新たなモデルが従来の量子論理のある種正当な拡張系であるという定理も示した。この成果は査読付き国際会議(AWPL 2024: The 6th Asian Workshop on Philosophical Logic)にて発表済みである。 もう一つは、以前の研究である複数観測者のための量子認識論理をさらに少し改良したものである。前年の研究実績報告において、論理の改良がなされたことを報告したが、今回さらに論理のモデルに細かな改良がなされた。この成果の一部は、査読付き国際会議(The 20th International Conference on Quantum Physics and Logic (QPL 2023) )にてポスター発表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、量子論理に、量子力学上および量子情報理論上重要と思われる多数の様相概念を加え、それらに合った数理論理学上の有用な数学的構造を構成することであった。前年度までで、当初の予定より若干遅れて、全体のうちの一部しかまだ分析できていないという報告を行った。しかしながら今回はその残りの要素である内積値や確率値に関する論理の構成および分析が出来たので、その遅れを取り戻したと言える。 そういうわけで、おおむね順調に進んでいる、といった評価が妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、今回までで当初予定していた研究のおおまかな部分は達成できたと言える。そこで、今年度からはそれぞれの概念に関してよりブラッシュアップする方面の研究に再び戻る予定である。具体的には、各論理における演繹体系の分析やモデルの改良である。量子論理の演繹体系は、ヒルベルト流体系やシークエント計算など様々なものがあるが、量子論理は基本的な部分で演繹体系という概念自体と相性が悪い性質を持っている。例えばシークエント計算はカット除去定理と呼ばれる性質を満たすことが望ましいが、量子論理の通常のシークエント計算はそれとは相性が悪い。それは今回の研究テーマで追加された概念を含む論理でも同様である。そこで、量子論理の発展系に合った改良型の演繹体系の研究が望まれるが、この新しく追加された概念を含むそのような演繹体系の研究はまだ行われていない。今後はそのような体系の構成を推進方策とする。 また、今回までに構成したモデルも完成はしたものの、いまだ改良の余地は残っている。特に、内積を含んだモデルに関しては、モデルの簡潔さと表現力の間のバランスの研究が重要となる。様々な概念を追加すれば表現力は上がるものの、不必要にモデルが複雑になり、逆もまた同じであるためである。
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